ビジネス書

持続可能な資本主義




はじめの一行

資本主義へのアンチテーゼ?

本書はこんな書き出しから始まります。

近年、資本主義の限界を指摘する本が数多く出版されています。直接的な契機は、2008年のリーマンショックでしょう。投機的なマネーゲームの末に巨大なバブルが崩壊し、以来、世界経済は長期低迷という状態に陥っていいます。

持続可能な資本主義(新井和宏)

本書では、その資本主義の限界と言われる背景には、何が潜んでいるのかを独自の視点で切り込みます。
こういうと、経済を分析した本か?というイメージが強いかもしれませんが、そうとも言い切れないように思います。
世の経済がなぜこうなっているかを明らかにしたうえで、私たち経営者に何ができるかを考えた本といえるかもしれません。

低迷の原因は数値化?

読み進めていくと次第に明らかになってくるのが、数値化の弊害。
ドライな数字に現れることだけを見ていると、物事の本質は見えない。
数値化の弊害として、点取り虫になるかのような集団になってしまいがちである。
そんなところに、世界経済の低迷の原因があるように感じられます。

本書の内容

「きれいごと」で行う経営

「きれいごとだけではやっていけない。」
ビジネスの世界ではよく口にされる言葉です。

理念経営であったり、社会貢献性であったり、
とかくビジネスはこういった「きれいごと」とは対極にあるようなイメージを抱きます。
しかし、著者が経営に携わる鎌倉投信は決してそうではない、と言います。

経営を数値化することはとても大事です。
これまでの金融機関は、数値化されたデータを分析し、投資先を選定してきたわけです。
たとえば、巨大銀行においては、組織内外に対して、行動の理由を数字で表せなければ、失敗したときには「責任問題」になってしまいます。

しかし、実際は、社員の表情や、応対の様子。
考え方が社内に徹底されているか。(行動ではなく、コアとなる考え方)
そういったものは、数字に表れにくい。
だからこの鎌倉投信は、投資先には一社一社ちゃんと訪問して、肌でその会社の社風を感じることを重視しているようです。
結果、投資先の状況は長期的に安定し、投資先との長期にわたる信頼関係を築いたうえで、顧客に対しても十分なリターンを提供できているといいます。

でだしの一行の意味

そんな内容から考えると、本の出だしの一段落の役割はそのまんまこの本の中心テーマに入るための導入と見えそうです。
ビジネスを人が介在するものとしてではなく、単なるデータとして扱う。
特に、リーマンショックはその象徴ですね。
なにしろ、債務者の顔が全く見えない投資がその発端となっているわけですから。

金融工学は、投資元と投資先の匿名性を高めることで、ハイリスク・ハイリターン商品を微妙に薄めたサブプライムローンなどというものを作りました。
その両者の関係に、感情の入り込む余地はありません。
それがビジネスとしては正しい、と言われていたことだとは思いますが、ここまで複雑化した世の中だけに、顔の見える付き合い事がこれからのトレンドとなるかもしれません。
高度に設計されたビジネスが、シンプルな方向に振れ始めているようにも思います。
その世の中の流れをイメージさせるスタート地点が、この出だしのなかに表現されているような気がしてなりません。

 


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