小説

スプートニクの恋人




はじめの一行

1

22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し、片っ端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまでに叩きつぶした。そして勢いを一つまみもゆるめることなく大洋を吹きわたり、アンコールワットを無慈悲に崩し、インドの森を気の毒な一群の虎ごと熱で焼き尽くし、ペルシャの砂漠の砂嵐となってどこかのエキゾチックな城塞都市を丸ごとひとつ砂に埋もれさせてしまった。

スプートニクの恋人(村上春樹)

あの村上春樹の作品。
でもって一行目は、主人公すみれが恋に落ちた。
しかも初めて。
22歳という微妙な年齢で。

始まりとして、すごくインパクトを感じるのは私だけでしょうか。

本書の内容

フランス映画的?

実は私は村上春樹さんの作品というのは、避けて通っています(笑)
というのも、私が好きなのはハリウッド映画で、フランス映画ではないから。
どういうことかというと、ハリウッド映画のように起承転結がはっきりしていて、それなりに疑問が解決される物語があスキだということ。
フランス映画というのは、どこか全体として静かで、起承転結がわかりにくい。
そして、考えないと見れない部分がある、というのが私のイメージ。

村上春樹さんの作品はどことなくキザで、回りくどくて、面倒くさい。
だからずっと避けていたんです。

ただ、この作品はそんな中でも比較的わかりやすい。
なんだかわからないけど、グイグイ引き込まれるものがあり、わかりやすい事件が起こり、それなりの結論が提示されています。
表面的な物語をなぞるのがすきな読書家には、比較的わかりやすい村上作品と言えるのではないでしょうか。

すみれの恋

本書の中心は、冒頭に出てきたすみれの恋について描かれています。
すみれとは、ずっと仲のいい「ぼく」がいるけど、「ぼく」にはすみれは関心がない。
無二の親友としてとても大事なのだけど、恋愛対象ではない。
一方、「ぼく」はすみれが大好きだけど、それを抑えて友達を演じている。
そんなとき突然であった、ミュウという女性。
すみれは、この女性に引き寄せられ、急接近していく。

ざっくりした物語はそんな感じなんですが、そもそもそういう筋書きなんて言うのは全体の中での小さな一部。
むしろそこを埋めるところに、この物語の本質があるのかもしれません。

ちょっと不思議な展開もあるんですが、その背景を読者が保管するあたりがこういう小説の楽しみ方なんでしょうね。

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