小説

眼球奇譚




はじめの1行

再生

私の眼前には、妻、由伊の身体がある。
暖炉の前に置かれた古い揺り椅子の上に、彼女はいる。結婚前に私がプレゼントした白いドレスを華奢なその身にまとい、座っている。人形のように行儀よく足を揃え、両手を肘掛けにのせてじっとしている。
この部屋の子の椅子に彼女を座らせ、自分はその手前の絨毯の上に寝そべり、暖炉の火を眺めながらとりとめもなく話をするのが、私は好きだった。彼女もまた、私と同様にそんな他愛もないひとときを好んだ。

眼球奇譚(綾辻行人)

何気ない生活のワンシーン。
のはずなのに、どことなく怪しげなムードを感じるのは私だけでしょうか。
それはもしかしたら、暖炉、揺り椅子といった普通の家にはあまりないアイテムのせいかもしれないし、白いドレスを着た「人形のような」妻の様子を見る男の視線なのか。
どことなく緊張感のある書き出しに、この先を期待してしまいます。

本書の内容

ホラー短編集

本書はどういうジャンルなのだろう?とおもっていたら、あとがき(解説?)のなかで、ホラー短編とあったのでホラーなのでしょう。
そんな比較的短い物語がいくつか収録されています。
どことなくおどろおどろしい話ですが、意外なことに「幽霊」めいたものが出てくるのは一話ぐらいじゃなかったかと思います。
短絡的に、ホラーと言えば幽霊、というイメージを私は持っていますが、本書はそれを覆す内容です。

ちょっぴりグロな内容もありますが、なんにしても独特のおどろおどろしさを持っている一冊じゃないかと思います。

「由伊」の謎

本書にある短編は、すべて違う登場人物で構成され、一話一話が完結しています。
しかしなぜか、すべての物語のキーになる人物は、「由伊」と名の付く女性。
それらはすべて、見る限り別人です。

なんとなく気になるのですが、最後の解説を見るとなにか含まれた意味があるようです。
(解説にはその種明かしはされていません)
さらに、物語の並び順にも作者の意図があるといいます。

この本、一つ一つの物語を楽しむと同時に、そんな謎を少しずつ解いていくのも楽しいかもしれません。
そういえば、その解説の中には、サスペンスの流れをホラーに取り入れているということですから、こういったなぞかけも楽しみの一つなのかもしれません。

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