はじめの一行
遠雷
八月の炎天下の日、雲ひとつない青空がひろがっていた。
七十を過ぎると、日射もたいして応えなくなる。見渡すかぎりの広大な田地、よく育った稲が微風になびいて黄金いろの穏やかな波をかたちづくる。そのさわさわとした音が心地いい。胸のなかを風が駆けぬけていくかのようだった。目に沁みる空の青さ。蝉の合唱は耳障りどころか、収穫を祝う宴のようだった。麦わら帽子を脱いで、肩にかけたタオルで額の汗をぬぐう。
小説の文面を見ていると、こういった風景の描写にけっこう力を入れているものを見かけます。松岡圭祐さんの小説もそうで、こういった細かな描写が物語のリアリティを形作っているのかもしれません。
本書の内容
自衛隊訓練で起こった事故
本書の話の中心は、自衛隊の訓練で起こったある事故です。
その事故では、死者が出ている、と推定されるものの、死体は出てこない。
なぜなら、人がその攻撃を受ければ、蒸発してしまうような平気だから。
つまり、状況証拠でしかないものの、そこで人が死んだらしい、と。
その加害者になるのは、伊吹という超優秀なパイロット。
本人は、自分を精神異常だとし、精神鑑定を求める。
組織としても、精神鑑定の結果次第では、組織を守れるということでそれに賛同する。
そして白羽の矢が立ったのが、あの岬美由紀だった。
岬美由紀の学生時代
実は、伊吹というのは岬の先輩。
防衛大学時代に、2人はあっているとのこと。
そんなこともあって、岬美由紀の古巣である自衛隊内を歩くと、様々な若かった頃思い出がよみがえる。
岬美由紀がなぜ、高校を卒業して防衛大を受験したのか。
防衛大で彼女の身に、何が起こったのか。
そして自衛隊で彼女がどうふるまっていたのか。
これまでの小説では、完全版の岬美由紀がさっそうと活躍していましたが、本編では未完成の岬美由紀がいます。
しかも、青春時代の岬美由紀が・・・。
前作のかなりぶっ飛んだ設定からすると、少し地味に感じるかもしれません。
実際には物語の展開は早い方ではなく、どちらかと言えば内面描写が多い。
あるいはそれを退屈と思う人もいるかもしれないし、そういった内面の動きが見えることで、より岬美由紀に感情移入する人もいるかもしれません。
なんにしても、本作は下巻と、そして次からの話の展開へ向けたブリッジのようなもの。
そんな風に感じましたがいかがでしょうか。
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