小説

青い春を数えて




はじめの一行

白線と一歩

原稿用紙から文字が泳いで逃げていく。見慣れたはずの明朝体が光の中に消えていく。照射されるスポットライトが私の脳味噌を鋭く貫く。瞬きを何度繰り返しても手の中の紙は真っ白で、何も見えやしなかった。

クリーム色の壁に、ぴたりと受話器が張り付いている。プルル、となった無機質な呼び出し音。職員室からの内線だろうかと予想しながら、私は箸の先端を冷め切ったウィンナーに突き立てる。視界の端で、部長である有紗が立ち上がるのが見えた。

青い春を数えて(武田綾乃)

初めの一行から、文学的なしゃれた表現が光りますね。
「文字が泳いで逃げていく」なんて言う表現、なかなかできるものではありません。

本書の内容

「響け! ユーフォニアム」の著者

私は読んだことがないのですが、映像化もされた「響け!ユーフォニアム」の著者だそうです。
実はこの本、私が買ったわけではなく、娘に借りました。
娘の感想は、「まあ、いろんな意味で青春」ということ。
読んでみてたしかに!と思いました。

本書は短編集です。
目次を引っ張ると、こんな感じ。

「白線と一歩」
「赤点と二万」
「側転と三夏」
「作戦と四角」
「漠然と五体」

割とマニアックに、ひっかけてますね。
実際の物語の中でも、主人公がリレーしてます。
一つ目の物語で主人公の近くにいる人が、次の物語の主人公という感じ。

こういった仕掛けがなかなか面白いです。

不安定さ

全体を通して一言で言うなら、青春時代の不安定さをすごく見せてくれる内容。
たぶん誰しもあったんじゃないかと思います。
思春期のどこか安定しない心、
人間関係といたものが。

そういったものを、若干のデフォルメはあるものの生き生きと描き出していて、たぶん同世代の人はうんうん、とうなずきながら読むのでしょう。
私のようなおじさんは、かつてのことを思い出して、懐かしむ感じでしょうか。

全体を通して、大きな盛り上がりも衝撃もないのですが、どこか静かなんだけど情熱的な若さゆえのジレンマに身を置く人たちの群像がみえる一冊。
読み終わって、どことなく若返った気がするのは、気のせいでしょうか(笑)

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