久坂部羊

廃用身




はじめの一行

まえがき

「廃用身」という言葉をご存知でしょうか。
介護の現場で使われる医学用語で、脳梗塞などの麻痺で回復の見込みがない手足のことです。
わたしがはじめてこの言葉を聞いたのは、クリニックの理学療法室でした。ある患者のリハビリについて、理学療法士からこんな相談を受けたのです。
「先生、Rさんのリハビリをちょっと減らすように、本人に言ってもらえませんか」
その患者Rさん(76歳)は、脊髄出血で下半身が完全に麻痺していました。それでも何とか自分の足で歩きたくて、人いちばい熱心にリハビリに取り組んでいたのです。ところが、理学療法士から見れば、麻痺の回復は絶望的で、リハビリはほとんど気休めにしかすぎませんでした。

廃用身(久坂部羊)

読み始めて、あれ?と思いました。
本来、小説のつもりでこの本を買ったのですが、なんだかルポルタージュみたいだぞ?と。
途中何度か、表紙と内容見返しました。
そういう意味では、まんまとハメられたわけです(笑)

本書の内容

ルポルタージュのような小説

前半は、漆原というあたかも実在しそうな医師が書いたという設定のルポルタージュ的内容が書かれています。
その内容は、件の廃用身を切ってしまえば、介護者にも、本人にもいい効果があるのではないか、という漆原医師の仮説と実験。
介護の現場は壮絶で、認知症老人は、炊き立てのご飯におしっこをかけるとか、便をポケットにためておくとか、そんなことがあるようです。
一方例えば、もう動く見込みのない手足が、日常の邪魔になっていたり、介護者にとってはその重さが非常に負担になっていたりする。
だったら、治る見込みがないのだから、手術で切断してしまえばいいのではないか。
漆原医師は、そんな実験を始めます。

そしてそれは、非常に良い効果を生んだかに見えました。

そんな本人によるレポートが前半。
それに対して、この実験を取材した記者による概観が後半という構成。

途中まで、フィクションなのか、ノンフィクションなのか悩むくらいの出来栄えで、本の中に小説の中で出版されたという本の見付まであります。
まったく凝った作りに騙されました。

「無痛」の著者

本書を手にとった理由が、著者の前作が非常に面白かったから。
その作品は、「無痛」、「無痛2」だったんですが、この発想がめちゃくちゃ面白かったんですね。
ちょっとグロなシーンもありますが、物語として凄く面白い。
で、本書は、その著者のデビュー作のようです。
凝った構成ももちろん、話の中身も相当面白いのです。

一方、介護に対するいろんな社会的な意見もそこに含まれていたりして、中身の濃い一冊だと思います。
麻痺しているとはいえ、その腕や足を切り落とすとか、そこから起こる事件とか、ちょっとグロい印象はぬぐえませんが、かなり興味深く一気に読んでしまいました。

Amazonでのご購入はこちら

【PR】———————————–
月々たった380円で雑誌が読み放題。
たとえば、コピーライティングで、女性誌・男性誌などをぱらぱらと見たいとか、
特定の趣味の人の話題を知りたいとか、そういったときにはとても役に立ちます。
私も契約して、どうしても参加しなければならないつまらない会議の時には、
これをiPadでぱらぱら見てます(笑)
メジャーな雑誌はけっこうそろっているので、おすすめです。




——————————————




ピックアップ記事

  1. 残酷すぎる成功法則 9割まちがえる「その常識」を科学する
  2. 成長マインドセット
  3. はじめに
  4. ある犬のおはなし
  5. 脳は「ものの見方」で進化する

関連記事

  1. 小説

    少女

    はじめの一行遺書〈前〉子どもなんてみんな、試験…

  2. ダリル・アンカ

    粉々になった鏡のカケラ 第1篇クリプティック-謎-

    はじめの一行第1章スリーロック・マウンテン人類…

  3. 小説

    スプートニクの恋人

    はじめの一行122歳の春にすみれは生まれて初め…

  4. 小説

    奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い

    はじめの一行まずは恐怖の体験から本書は、行って…

  5. 小説

    未来のミライ

    はじめの一行プロローグほんの少し昔、磯子の街に…

  6. 小説

    6時間後に君は死ぬ

    はじめの一行あれっ!?鮮烈なタイトルですが、本…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。







  1. ビジネス書

    会社の寿命―盛者必衰の理
  2. マンガ

    ゆる視えっ! オバケっぽいものに遭いました。
  3. つのだじろう

    恐怖新聞(5)
  4. マンガ

    小説 ブラック・ジャック
  5. ビジネス書

    「売る」コピー39の型
PAGE TOP