デイビッド・サックス

アナログの逆襲: 「ポストデジタル経済」へ、ビジネスや発想はこう変わる




はじめの一行

はじめに ポストデジタル経済へ

アナログの逆襲

二〇一二年六月、ジューン・レコーズという店がトロントのリトル・イタリー地区に開店した。私が妻と買ったばかりの家からほんの一ブロック半のところだ。ジューン・レコーズは、少年時代から通っていた埃っぽくて雑然としたレコード店とはまるで違った。モダンで、商品はきれいに整理され、明るい照明が店内を煌々と照らしていた。ブティックと言ってもいいくらいだ。家の購入契約を交わしたのち、近所を散策していた私は、この店の前の歩道で、窓際のターンテーブル(レコードを回して鳴らすプレーヤー)から流れてくる美しいサウンドに思わず足を止めた。

アナログの逆襲: 「ポストデジタル経済」へ、ビジネスや発想はこう変わる(デビッド・サックス)

自分に起こったエピソードから始まるまえがき。
正直なところ、ちょっと好奇心を掻き立てられる・・・という文章からは程遠いのですが、エピソードを主体とした本書らしい書き出しと言えるかもしれません。

本書の内容

デジタル化に進む時代の中で・・・

本書は、レコード、紙、フィルム、印刷物・・・などといった時代の流れの中で、一見消えゆくようなものを取り上げています。
これらは今青息吐息の業界か?と言えば実はそうでもない。
かなり活況なのだと言います。

そこで、そういった動きを知ることで、時代の次の流れを読んでいこう。
そんな趣旨の本だと思います。

さて、これらの「アナログ」の世界、果たして残るのでしょうか?
たぶん、残るような気がします。
なぜかというと、顧客は「体験」を求めているから。

サブスクの音楽配信に感じること

ここからは私の私見になります。
私が中学のころ、新しい音楽に出会いたくて、レンタルレコード店におこずかいを握り締めて通いました。
ラジオから流れていて記憶に残っている曲、過去に聞いてよかったと思うアーティストの新曲、ひいきのアーティストのニューアルバム。
たくさんほしいものの、限りあるおこずかいで手に入れられるのはわずかです。
そういったものをレンタルし、自転車で家に帰って、カセットテープに録音する。

もちろんハズレのレコードもあるのですが、何度も何度も聞いて、好きになろうと努力する。
結局はダメなものもあるけど、何度も聞いているうちにだんだんと好きなものになっていくこともある。
そうやって一つのアルバムを聞きこんだ体験は、いまでも結構明確に思えてしまいます。

しかし今や音楽は何の苦労もリスクもなく、サブスクリプトの聞き放題サービスで聞くことができます。
初めの5秒聞いて、気に入らなければ「次」となる。
結局は、どの曲にも愛着を感じることなく、次々と音楽を消費していく自分に気づきます。
たぶん、この曲に中学の頃に出会ってたら、スゴイ価値を見出すかもしれませんが、今となっては「変わりはいくらでもある」状態。
これはコンテンツの価値を下げるし、コンテンツのつくり手も安っぽいはじめの10秒に全精力を傾けた作り方になりがち。
こうやって、エンタメの世界は薄っぺらくなっていくのかも、という気がしました。

デジタルではできない体験

アナログの世界では、デジタルではできない体験があります。
フィジカルな体験です。
もしかしたらその内デジタルでもそういった体験ができるように保管されてくるのかもしれませんが、少なくとも今のところはそうとも言えない。
愛着を持ってレコードに針を落とすという動作や、
モレスキンの手触りや書き味、
そういった体験や、手間もまたエンタメの世界には要素として必要なのかもしれません。
デジタルの世界が、VRや3Dといった別の体験へ触れる一方、アナログのリアルな体験も、やっぱり必要なのかもしれない、と思わされる一冊でした。
これからのビジネスを考えるうえで、忘れてはいけない視点かもしれません。

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