小説

少女




はじめの一行

遺書〈前〉

子どもなんてみんな、試験管で作ればいい。
選ばれた人間の卵子と精子で、優秀な人間だけを作ればいい。
それが無理なら、生まれた子供は全員、国の施設か何かに収容されて、成人するまでそこで育てられればいい。
同じ服、同じ食事、同じ教育、同じ保護者……。みんな平等な環境を与えられて。
そのなかで、努力と才能が足りなくて、落ちこぼれてバカにされたり、性格がゆがんで迫害されるのなら、仕方がない。
勉強もスポーツも、見えないところで努力した。本もたくさん読んだし、音楽もたくさん聴いたし、ファッション誌もチェックした。だからと言ってそれを誇示したりはしなかった。

少女(湊かなえ)

少女というタイトルがあって、この書き出し。
少なくとも、主人公は何かしら世の中、あるいは自分の境遇に不満を持っていることはよくわかります。
そしてそれは「遺書」という形でしたためられます。
いきなりの謎を投げかけられれば、ついつい先を読み進めたくなってしまいます。

本書の内容

安心の方向へ動いていたはずが…

この物語の基本は、2人の女子高生の動きにあります。
その二人は、身近に死を感じたい。
そんな好奇心を持っていました。
その背景には、色々と現実社会の中でうまくいかないことや、理不尽に感じることがあるわけです。

そんな希望を持った二人は、それぞれ違ったルートでお互い知らせずにある場所に居つくことになります。
一人は、小児科病棟。
そしてもう一人は老人ホーム。
彼女たちは、そこにいれば、死を身近に感じること、人が死ぬ瞬間を見ることができると信じて。

そんなちょっと怪しげなムードも、少しずつ和らいできます。
彼女たちはそれぞれの場所で、自分の居場所を作っていくから。
このまんま、高校生のひと夏の経験として、大人になれた。
そんな風に物語は終わると思えたのですが……

遠くて近い

たぶんこの物語は、少し地方の物語。
そんな狭い世界の中では、いろんな人がいろんな形で、意外につながっている。
目の前にたらされた糸を手繰ってみたら、ズサっと砂から浮き上がった糸は意外なところにつながっていた。
そんな話が次から次へと出てきます。

まあこの辺りは、ぜひ、本を読んでいただければと思いますが、落ち着きそうに見えた物語はそこに着地することなくまたもや離陸。
そして結末へ…。

最後の数十ページの盛り上がりといたら。

といっても湊かなえさんの紡ぐ物語は、私のイメージで言うと動的というより、どこか静か。
確かにいろんなことが次々と起こるのですが、どこかクールな部分があって、温度感はけっこう低かったりします。
きっとこのかたの物語が好きな人は、そういう部分が好きなんでしょうね。

この本は、今まで読んだ湊さんの本の中では一番気になる一冊となりました。

Amazonでのご購入はこちら

【PR】———————————–
月々たった380円で雑誌が読み放題。
たとえば、コピーライティングで、女性誌・男性誌などをぱらぱらと見たいとか、
特定の趣味の人の話題を知りたいとか、そういったときにはとても役に立ちます。
私も契約して、どうしても参加しなければならないつまらない会議の時には、
これをiPadでぱらぱら見てます(笑)
メジャーな雑誌はけっこうそろっているので、おすすめです。




——————————————




ピックアップ記事

  1. 成長マインドセット
  2. 脳は「ものの見方」で進化する
  3. はじめに
  4. 残酷すぎる成功法則 9割まちがえる「その常識」を科学する
  5. ある犬のおはなし

関連記事

  1. 小説

    記憶屋II

    はじめの一行芽衣子本書での主人公っぽい立場にい…

  2. ピエール・ルメートル

    その女アレックス

    はじめの一行何気ない日常アレックスはその店で過…

  3. 小説

    霊感検定 心霊アイドルの憂鬱

    はじめの一行主人公のボヤキこの本もシリーズ化さ…

  4. 堂場瞬一

    バビロンの秘文字(下)

    はじめの一行第二部 追跡(承前)13-----…

  5. 小説

    不連続の世界

    はじめの1行木守り男マンションを出て住宅街を抜…

  6. 小説

    がん消滅の罠 完全寛解の謎

    はじめの一行不思議な物語の始まり本書の始まりは…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。







  1. ビジネス書

    直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN
  2. 塚本亮

    群れない。 ケンブリッジで学んだ成功をつかむ世界共通の方法
  3. ダリル・アンカ

    本当にやりたかったことを、今すぐはじめよう!
  4. ビジネス書

    創業一四〇〇年――世界最古の会社に受け継がれる一六の教え
  5. サム・カーペンター

    社長の生産力をあげるシステム思考術
PAGE TOP