目次
はじめの一行
第一章 遊ぶ鬼 麻子
風が温くなった。
隅田川を西へわたる橋の途中でふと足を止め、結城麻子はまばゆい川面を見下ろした。
灰色の船が橋の下をくぐってゆく。水面にかがよう光の粒が、左右に分かれては弾けて散る。後ろに長く引かれた艀にまだ樹皮の付いた丸太が山と積まれているのを、麻子は髪を耳にかけながら見送った。あのまま木場のあたりまで下ってゆくのだろうか。
本書の中身は割とドロッとした、愁いを帯びたものなのですが、書き出しはこんな感じ。
明るい陽の下で、和香というのとは少し違うけど、静かなたたずまいの中で物語が始まります。
意味深なタイトルも気になりますね。
本書の内容
官能小説
本書を一言で表すと、官能小説・・・という事になるでしょうか。
京都と東京、二組の夫婦が物語の中心です。
ふとしたきっかけでつながったこの夫婦、それぞれに一見良い夫婦に見えますが、どことなく「足りなさ」を感じています。
何かが足りないとか、何か核心を突くことができていないとか、そんな少しイラっとする状況がある。
それぞれは当初その原因がよくわかっていなかったのですが、あるきっかけでそれは性的嗜好にある事がはっきりとわかるようになります。
征服されることが望みである女と、虐げられることが至高の喜びである男。
一方では、征服することで喜びを見出す男と、服従させることに歓喜する女。
こういった夫婦が出会い、交じわいます。
お互いのパートナーにはひみつで。
それぞれの”恋”は次第にエスカレートし・・・
おもむき
この小説、内容的は割と激しい性的嗜好を開放する内容になっています。
当然そういうシーンもありますし、その表現は生々しさを伴います。
ただそれは、ありていなエロ小説とは違い、やはり文学的。
直接的表現は少なく、比喩が中心となるのですが、それが逆にリアリティを感じさせる内容となっています。
そしてじっとりと湿った4人の関係性。
この異様な盛り上がり方は、正直少しドキドキするものがありました。
どことなく、純粋。
そして、そういった思いと、理性の葛藤。
最終的にどうなるかは、読んでのお楽しみです。
内容的に、物語的な「うまくいきすぎやろ」的部分がないわけでもないですが、私はそんなに気にはなりませんでした。
いろんな意味で、読後感が後を引く感じの小説です。
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