小説

空飛ぶ広報室




はじめの一行

空飛ぶ広報室

航空自衛隊の戦闘機(ファイター)パイロットは戦闘飛行隊(TAC)で使う愛称としてタックネームをそれぞれ持っている。無線などで呼び合うためのニックネームだ。基本的には自己申告制なので趣向を凝らした名前を各自が新人のころに考える。
だが、申告したタックネームが周囲の支持を得られない場合は、周囲の先輩や飛行隊長の一存で名づけられてしまうこともある。特に、新人の分際であまり格好をつけたタックネームを申告すると却下される可能性が高い。

空飛ぶ広報室(有川浩)

この後、主人公空井が自分のタックネームにスカイというカッコいい奴を申告し、空井だし、そして無類の飛行機好きだし、仕方がないな、と相成る。
主人公のキャラクターを紹介すると同時に、全体を通してのテーマの一部となる「空」を意識させるメタファーを仕込んでいるともいえる始まりかもしれません。

本書の内容

ドラマ化作品

実は私がはじめてこの物語を知ったのは、Amazonプライムでドラマ版を見てからです。
何のことはない、ドラマの重要なキイとなる人物稲葉リカをあの新垣結衣が演じてたからです。
ガッキーに吸い寄せられるように見ていると、まあとにかく面白い。
で、いつか、原作本にチャレンジしたいな、という思いがやっと実現しまして。
ドラマと原作はかなり内容は近いのですが、エンディングが少し違います。
原作本を読んだ人にも楽しめるような配慮をしていたのかもしれません。

本書の舞台は航空自衛隊。
帝都テレビに勤める若くて美人、だけど、非常に気が強くて扱いにくいディレクター稲垣リカは、もともと報道班にいたもののあるトラブルが原因でバラエティへ。
一方、航空自衛隊の戦闘機パイロットであった空井は、不慮の事故でパイロットを断念し、広報室へ。
はじめに目指したところにたどり着けなかった二人が、ここで出会う。

両者は、慣れない仕事に一生懸命くらいつく中で、それぞれ成長し、徐々に自分の本当の道を見つけ始める。
若い男女ですから、いろんなこともありますが、こっちはちょっぴりイライラするかな(苦笑)

2人の眼から見た航空自衛隊

あこがれてやってきた空井と、まったく知識ゼロで担当になったリカ。
同じ航空自衛隊を見ているのですが、もはやその視点はまったく違うところにあります。
そういったことを徐々に知り、気づき、成長していく二人が本書の一番の見どころかと思います。

また本書執筆に際して、著者は半年ほどにわたり航空自衛隊を取材したようです。
読んでみるとわかりますが、そうでなければここまで詳しくは書けないだろう、という内容です。
さらに言うなら、テレビ版も自衛隊に対する説明や、実はセリフの多くも小説版とほとんど変えていなかったりしますので、そういった取材の成果をリスペクトしているのかもしれません。

他にトピックスと言えば、あとがきを見ると、この物語に出てくるいくつかの癖のあるキャラクターは、実在のモデルがいるようです。

ということで、本書を半分ほど読み始めてドラマをまた見たくなった私は、同時進行でドラマと小説を見比べました。
面白いくらいキャストがはまっていて、これほど原作と映像にギャップを感じないドラマは少ないんじゃないかと思います。

そして、2011年の夏には出版される予定だった本書は、東日本大震災の発生にともない著者の意向により、水没した松島基地の様子がリカの眼で語られる最後の一生が付け加えられています。

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