佐藤青南

ツインソウル 行動心理捜査官・楯岡絵麻




はじめの一行

1

場違いに響き渡る高笑いが不快で、西野圭介は眉根を寄せた。
軽く顔をひねり、ちらりと左に視線を滑らせる。
背中が見えた。男のものだ。リラックスした様子で両足を広げ、パイプ椅子に座っている。身長はそれほど高くないものの、肩口から腕にかけての筋肉が流々とした逆三角形のシルエットは、かなり喧嘩慣れしているように見受けられた。

ツインソウル 行動心理捜査官・楯岡絵麻 (佐藤青南)

若干ハードボイルドな入り方。このシリーズもたぶん8作目くらいでしょうか。固定ファンも多い作品だと思いますが、きっとファンはこう思います。「あれ?西野にしてはシリアスだな」と。
テレビドラマなどではありがちですが、このあとちょっと抜ける感じがありますのでご安心を。
少し意外性の春始まりだったように思います。

本書の内容

天才取調官

この物語の骨格は、サスペンスではあるものの、事件のシーンや現場の様子はあまり語られません。もちろん、話の流れの中で、それらが語られることはあるのですが、このシリーズの舞台のほとんどは、取調室の中。そういう意味では、多くのサスペンスとは一線を画する作品じゃないかと思います。

具体的に言うと、主人公の楯岡絵麻は、心理学にたけていて、相手の微細な表情(マイクロジェスチャー)をかなり正確に読み取ることができます。例えば人はうそをつくとき、どんなに取り繕っても必ず無意識の動作で本心を表すものなのだそうです。
「〇〇したよね?」といわれて、嘘をつこうと口ではNOといっても、一瞬小さくうなずく動作が入るというのです。

このマイクロジェスチャーを頼りに、楯岡絵麻は次々と事件を解決していきます。つまり、証拠を重ねたうえで逮捕、自供という順序ではなく、まず逮捕があって自供させたうえで事件の捜査が進展する、という一風変わった流れになります。

人気者が巻き込まれる事件

本書では、独立した4つの章に分かれています。いわば短編集のようなものです。その一番目の事件は、人気のYouTuberが殺された事件。被疑者は捕まったものの、どうもその殺人の経緯やからくりがわからない。それを絵麻お得意の心理学的な分析で自供に導いていきます。話の内容もさほど複雑なものではないので、ちょっとした自己紹介代わりの物語といえるかもしれません。

そして次にはちょっと複雑な人間関係の描かれた「二つの轍」。資産家介護老人とヘルパーの人間模様を写し取った「トンビは何を産む」。次回作へ続くかのような含みを残した、「きっと運命の人」、とだんだんと人間関係や事件の背景が複雑化していきます。特に最終話のきっと運命の人にいたっては、ちょっとした驚きがあると思います。

今回も新しいキャラ増えて、にぎやかになってきました。西野には恋人がいて、楯岡と西野の微妙な距離感はどうなるのか、とか、新キャラのシオリちゃん(割と謎の多い登場人物)が今後どう絡んでいくのか。ちょっと次回作が楽しみです。

いやーーー、読書って素晴らしいですね。

 

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