ノンフィクション

人は、なぜ他人を許せないのか?




はじめの一行

はじめにーーー許せない自分を理解し、人を許せるようになるために

「我こそは正義」と確信した途端、人は「正義中毒」になる

あなたは、どんな時に人を「許せない」と思いますか?

「恋人や配偶者が浮気をしていた」
「上司からパワハラやセクハラを受けた」
「信頼していた友達から裏切られた」
こうした状態を、私は正義に溺れてしまった中毒状態、いわば「正義中毒」と呼ぼうと思います。この認知構造は、依存症とほとんど同じだからです。

人は、なぜ他人を許せないのか?(中野信子)

今けっこう売れてるっぽい本書。世の中全体が例えば、「安倍総理はダメ」「いやいやけっこう頑張っている」とか、「コロナは怖いから自粛を続けよ」「コロナなんて大したことない」とか、まあ意見が真っ二つに分かれる分断の様相を呈しています。こういった背景もあって、自分と意見の異なる相手を打ち負かそうとするやり取りが、SNSなんかでも結構見て取れます。さらには、先日もSNSが原因とみられる有名人の自殺騒動がありました。そういった背景の中で、こういった「正義中毒」をテーマにした本を出すというのは、なんともタイムリーかと思います。そういったタイミングだけではなく、一番初めの一行に結論めいた強い一行。これは強力です。ふらふらっと、本書を持ってレジに並びました(笑)

本書の内容

他人をつるし上げる悦び

本書の第一章は、先ほど私も触れたSNSのお話から。今までも当然あった感情ですが、これをSNS表面化させたと言います。特に匿名での発言は抑制が効かず行くとこまで行きがち。ある考えを取る人は、その考えを理解しない人をバカにしがち。自分は優れていた、物事がわかっているけど、自分と同じ考えをできない人はバカだ、とでもいう感じに。ある意味マンティングですね。

日本は「優秀な愚か者」の国

著者は、こういいます。「日本人は摩擦を恐れるあまり自分の主張を控え、集団の和を乱すことを極力回避する傾向の強い人たち」こういった傾向を示すのは、数万年来日本は自然災害が多い国だからという考えを著者は取っています。そういった中にあっては、輪から外れてしまうことは非常にリスク。そんな環境の中では、自分の意見を押し殺して集団の中に溶け込むことが最もリスクの低い生き方。当然学校などでも、破壊的な天才児より優秀な優等生が優遇されることにより、天才的な子供が排除されがち。社会に出ても、企業は多くの場合スポーツをやっていた人を珍重します。その背景には、集団行動ができる人、というくくりがあって、企業の和を乱さない人を優先的に採用するのですから、破壊的な天才はなかなかめがでません。歴史的にもそういった環境がある、という前提はけっこう大きな影響を及ぼしていると考えられそうです。

なぜ人は人を許されなくなってしまうのか

政治的な話になると、「保守」対「リベラル」という対決があります。こういったことは実は、脳の性質の差異が興しており、リベラルが保守に勝つことは、科学的に不可能であろうという研究者がいるそうです。日本では、政党政治をとっているものの、その政党の個性が明確にならないため、保守対リベラルという構図は見えにくいですが、これらは遺伝子の特徴にも現れるそうなので、この辺りは脳科学者としての著者の知見が披露されている章になります。

そこで、人はそういった脳の差異や、遺伝子に組み込まれた特質を基本に、その集団を守ろうとします。その集団を守るには、その集団の正義を定義し、そこからはみ出る人を「悪人」として叩く行為に快感が生まれるようになっているというのです。こうなると、誰かを叩けば叩くほど気持ちがよくなり、その行為をやめられなくなるといいます。まさに「正義中毒」。依存性があるのだと言います。

考えてみれば、今の世の中、すべてのものに「対決姿勢」を見出すことができます。そういったことを子どものころから、たとえば、漫画やヒーロー映画などで植え付けられる、あるいは無意識に求めることを考えると、人間の根源的なところに対決姿勢があり、その結果相手を打ち負かすことで感じられるエクスタシーのようなものがあるのかもしれません。かけっこも、勉強も、スポーツも音楽も、常に私たちは競うことが前提にあるように思います。

メタ認知

こういった対決姿勢、そして正義中毒はどうすれば抜け出ることができるのでしょう。本書でお勧めするのは「メタ認知」です。自分の感情を、自分が主体として浸るのではなく、感情を持っている自分を少し俯瞰している自分が見ている、という状態を持つことがとても大事になります。たとえば、芸能人の不倫のニュースを見たとしましょう。いつもなら、ここでかーーーッとなって、SNSなんかにひどい言葉を書き込もうとしたとします。その時にもうひ利の自分が、カーッとなっている自分を見るわけです。「ああ、オレ、なんかカーッとなってるな。いま、SNSにどんなにひどい言葉を書けば相手にダメージを与えられるか、必死に考えてるな」なんて見るのです。すると、次第にやってることがバカバカしくなってきます。

このメタ認知、どうやら体得しやすい人とそうでない人がいるようです。たとえば、かーーーッとなった瞬間、気が付いたら何かしらの行動を起こしていたというくらい感情と行動が直結している人は、もう気が付いたときには遅かったということがあるようです。ここは、もう日々意識するしかありません。感情と行動を分離するという意識から始める必要があるかもしれません。

そういった意味では、メタ認知を獲得するにおいて参考になりそうな本を以前ご紹介させていただきました。もし関心ありましたら、こちらも併せてみていただくといいかもしれません。

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