今村昌弘

屍人荘の殺人




はじめの一行

剣崎比留子殿

前略
そちらは変わらず健勝のことと思う。挨拶は苦手なので早速だが本題に入らせてもらう。
先日依頼を頂いた班目期間なる組織の調査に関して報告書を送る。
但しこれは、まとめた私の眼から見ても著しく常識を逸脱した奇々怪々なるないようであり、調査を進めるうちに期せずして公安調査庁の極秘事項にまで踏み込むことになってしまった。

屍人荘の殺人(今村昌弘)

誰かにあてられた手紙。こういった文章で始まる小説、たまにありますね。とはいえ、意表を突いたはじまりですのでついつい目が留まります。
本書はいろんな意味で型破りですから、こういったはじまりの奇異さがマイルドに見えるのですが・・・。

本書の内容

2つのジャンルをミックス

さて、この本をご紹介するに際して、何をどこまで書いていいのかに困ります。まあ、そもそもサスペンスというかそういった類の本に関して言えば、どの本も同じと言えば同じですがこの本は格別に「紹介してはいけない」であろう部分が多いような気がします。

ざっくりしたあらすじはこうです。明智という登場人物がいて、主人公といえる葉村という人物がいます。葉村はひょんなキッカケから明智とであい、大学のミステリー愛好会に入会することになります。明智というのがどこにでも顔を突っ込み、事件を解決するという人物。葉村は出会いはたまたまではあるものの、その明智を慕い始めていた。そんな時、大学の映画研究会の夏合宿の話が舞い込んでくる。この合宿は、昨年、男女間のトラブルがあったとかで、なかなかにきな臭いシチュエーション。とはいえ、映研の一部の人間が画策する悪だくみがあるわけだから、彼らのような部外者が同行できるわけもない。そこで現れたのが、剣崎という美女。もともと女の子をたぶらかしたいのが合宿の狙いだったので、美人の参加者は大歓迎。そして剣崎は、明智たちの同行を条件に夏合宿に参加することになりました。

そして、その合宿で起こるのは、ありがちな事件だけではなかったのです。

とまあ、そんな感じで、ホラーとサスペンスをまとめてまだら模様にした感じの小説と言えばわかりやすいでしょうか。まあホラーと言っても、そんなにゾワゾワするような感じではないので、ホラー耐性のない人でも読むことは問題ないと思います。

読んでみての感想

本書の始まりは、本格推理小説風で、読者にも推理を求めるようないでたちに見えました。実は私は、サスペンスであれ謎解きをしながら読むタイプではありません。ただ、文章の流れに沿って読み、その流れだけを楽しむタイプなので、謎解きそのものにはそんなに関心がありません。だからちょっと困ったなぁ、と思っていたのですが、読み進めるとさにあらず。前述したとおり、いろんな要素がふんだんに盛り込まれていて、割と普通のエンタメ小説として読むことができました。

事件が起こってからの展開はワクワクさせるものがあるし、エンターテイメントとしては極上!とまではいかないもののソコソコ楽しめます。生涯記憶に残る一冊かというと、そこまでの思い入れはありませんが、一定の時間を楽しむ手段としては悪くないと思います。数々の賞を受賞しているということですが、残念ながらそこまでのインパクトは感じませんでした。どうやら続編っぽいものがあるようなので、そちらに期待です。
ただ、この小説のシチュエーションは、今までの小説になかったタイプのものなので、「ああ、その手があったか」というのは実は今も結構感じています。

いやーーー、読書って素晴らしいですね。

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