ビジネス書

大きな嘘の木の下で ~僕がOWNDAYSを経営しながら考えていた10のウソ。~




はじめの一行

はじめに

僕は決してエリートではない。大学も出ていない。というか、中学2年生くらいを境に、まじめに学校に行って勉強をした記憶すらもほとんどない。

若いころは、強い男にあこがれてボクシングをかじり、うまくいかないと今度はモテたい一心でバンド活動に明け暮れる。そんなどこにでもいる普通の男の子だった。

20歳の誕生日を迎えたころ、「お金持ちになればモテるだろう」というありきたりの考えから、なんとなくおかねになりそうなことに片っ端からクビを突っ込み、つぶれた喫茶店を友人のお父さんから無料で貸してもらい、思い付きと勢いだけでマンガ喫茶を始めた。

大きな嘘の木の下で ~僕がOWNDAYSを経営しながら考えていた10のウソ。~(田中修治)

本書のまえがきはこの後、著者の人生の波をしばらく表現する流れになります。ご自身の人間性をあきらかにして、その過程で学んだことが本書の内容である、という流れだったかと思います。

本書の内容

成功したら「いい人」になる人々

いろんな本やインタビューを見ていると、経営者などで成功された方の多くは、とてもいいことを語られます。現場での素顔はきっとどこか癖のある性格の人が多いと思うのですが、表に出ると意外と癖のない「ああ、どこかの本で読んだな」とか、場合によっては道徳の教科書を読んでいるのか?というようなことを語る成功者はけっこう多いと思います。本書のまえがきにある、「モテたい」一心でいろんなことをやっていた著者度同様、多くの成功者たちも、実は本音はそんな俗っぽいところにあるのではないか、というちょっとした皮肉が先に紹介したまえがきには込められているのかもしれません。成功者は公人となり、その言論は本音からほど遠くなる。しかし、田中修治さんは「そんなきれいごとで終わらせてはいけない」と、あまり成功者が語らないようなドロドロとした現実や心情を吐露する。それが本書の中身だと私は感じました。世間に流布する言説を「嘘」とばっさり切ってしまうことには勇気のいることだと思うのですが、破天荒フェニックスたる田中修治さんはそういった世間体に迎合することのない反逆者(?)なのかもしれません。

私の個人的感想を言わせていただくと、本書で語られている事のすべてに首肯するわけではないのですが、「ああ、きっとこの人は経験の中からこう学んだんだな」と納得はできる話ばかり。少なくとも、本書の中には著者の視点で見たときの「嘘」は一つもないんだろうな、という印象を持ちました。ここまで正直に話される内容は、多くの人の心に何かしらの影響を与えるのではないでしょうか。

ちなみに著者の前著は、こちらです。

破天荒フェニックス オンデーズ再生物語

まえがきと、この本を読むとわかりますが、かなり極端な行動パターンを持たれていて、常にハラハラ(笑)そういった左右の端っこのところを経験したから、その間の中庸を知っているのかもしれません。

幸福論のウソ

この章では、幸せということに関する考え方を披露しています。実は、幸せと言えば、心理学の一つの分野として幸福学という学問があり、様々な研究が進められています。ここで書かれていることは、そういった研究結果と合致するものも多く、著者がここに書かれた結論を自分で導き出したとすれば、常に内省の日々を過ごした結果ではないかと思います。私にとって響いたのはこんな移設です。

そもそも「幸せ」という言葉は「状態」を表すものではなく、瞬間、瞬間に感じる「感情」を表すもの

そして、幸せは相対的なモノです。もうこれ、「もっと、もっと」と求め始めるときりがない。

そこで著者は、「幸せ」ではなく「豊かさ」を目指そうと提案しています。幸せは絶対的な指標がないのですが、豊かさなら計測可能だからということでしょうか。そういった考えも一理あるのかもしれません。

お金論のウソ

本書が提案するのは、お金というのはただの紙切れ。単なる交換ツールでしかないと言います。そして、お金に困っている人は不利な交換ばかりをしているという。お金持ちになりたければ交換の達人になれ、と提案します。そのために、「100円でジュースを買う」ではなく、「100円をジュースと交換する」と言い換えることを進めています。実際にはお子さんにもそういった教育をされているようです。こうなると、受けようとする商品やサービスの価値を明確に感じ取ることができるかもしれません。そして何かあった時に頼りになるのは、お金より信頼。何かと交換するなら、そういった後々役に立つものと交換していくことが大事なのかもしれません。

仕事論のウソ

仕事と労働を分けて考える。そして、仕事と遊びの境界線はじつはあやふやである、と言います。著者はゲームをするのが苦痛だけど、子どもとの約束て一定時間ゲームをする。それが著者にとってはつらい労働たと言います。しかしゲームが楽しい人にとってはそれは遊び。つまり、何かをやるとき、それを遊びのように楽しめるかそうでないかは、その人のとらえ方次第と言えそうです。しかし、仕事というとなぜか強制的に体と時間を使った労働というものと紐づけられた思考があるため、仕事を楽しむというのが難しい時代が長く続きました。そういったところら、仕事と遊びの境界線をあいまいにする仕掛けとして、OWNDAYS社における仕事のゲーミフィケーションや、そのためのアプリの紹介がされています。ここまで自己啓発や哲学書っぽい話ばかりでしたが、ここで初めて(?)ビジネス書っぽい記述が見えます。

成功論のウソ

書店に行けば、成功哲学・成功法則の本は沢山あります。ダイエットと一緒で、なかなかうまくいかなかったり、行動が続かないからそういった本が次々と消費されていくのでしょう。本書では著者は「画一的な成功法則などない」という考えをとっています。誰かがやって上手く言った方法を、自分がやって上手くいくかどうかはわからないものではないか、と。そして、成功はアートであり、失敗はサイエンスと言います。つまり、成功というのは偶発的要素もあり、それぞれの才能もあり、そこへ至る道のりは様々なのですが、失敗には一定の法則があると考えらえる。だから、失敗を科学することこそが大事である、と言います。

人生論のウソ

これは主に「選択」の話。たとえば、就職するときにA社とB社があってどっちを選ぶかで人生の分岐点であるかのように感じがち。そして、A社を選んだ結果「こんな困ったことになった」とします。すると、B社を選べばよかった、なんていう後悔の念が押し寄せる。しかし、実はB社を選んでいたらもっと悪いことになっていたかもしれないわけで、実はその答え合わせをすることは不可能なわけです。だから、A社を選んだ現実において、B社を選んだ仮定などありえないというのです。なるほど、たしかに。選んだ時点で、選択肢の片方は消えていく。私たちの目に見える人生はそんなものなのかもしれません。

経営論のウソ

「失敗してもいいからやってみろ」そういう上司はけっこう評価が高いようですが、本書ではそんなことあり得ないと言います。成功させるモチベーションを持たずして、進歩はあり得ない、と。そして人に期待しないなど、一般的な「表」のビジネス書ではあまり言わない主張をされています。読むとなるほどと思うところもたくさんあります。

・・・ということで、本書の概観を非常にざっくりした感じでなぞってみましたが、私個人的にはここ数か月で読んだ中では、かなり心に刺さる一冊でした。著者は自身を「ネクラ」と言っていますが、ネクラな私が感銘を受けたのはそこに共通点があったのかもしれません。表面的なきれいごとに飽きた人にお勧めします。

 

いやーーー、読書ってすばらしいですね。

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