ジャレド・ダイアモンド

危機と人類(上)(下)




はじめの一行

プロローグ ココナッツグローブ大火が残したもの

二つの人生経験

たいていの人は、一生のうち何回か、個人的危機や大きな変化を経験する。それを乗り越えるために自分を変えようと試みるが、奏功する場合もしない場合もある。同じように国家も危機に見舞われることがあり、それを国家的変革によって乗り越えようとするが、こちらもやはり成否が分かれる。個人的危機の解決法については、医療関係者や心理療法士による膨大な研究や事例の記録が蓄積されている。そこから得られた結論を活用して、国家的危機の解決法を解明できないだろうか。

危機と人類(ジャレド・ダイアモンド)

本書のテーマをズバリ指摘するこのまえがきは、ノンフィクションとしては誠実で、わかりやすいものですね。
私自身この長い本を読み終えた後、ここに戻ってくると、ああ、そうそうこの本はそういう本だったんだ、となんとなく腹落ちします。

余談ですが、このブログを書くため、一度読み終えた本の一番初めに戻るというのはけっこうありがたい経験で、小説ならば「ああ、起点はそんなところだったっけ」ということになりますし、この手のノンフィクションなら「そうそう、これがテーマだった」と確認ができる。お勧めの本の読み方の一つかもしれません。

本書の内容

ざっくりいうと・・・(ネタバレアリ)

本書の内容を非常にシンプルにお伝えするとするならば、国としての危機を乗り越えた方法の経験値のアーカイブとでも言いましょうか。まさにまえがきにあったような、非常に特徴的な国家の危機の乗り越え方を歴史から引っ張り出し、日の下にさらしている一冊と言えるように思います。本書では7か国の事例を取り上げています。

ペリー来航で開国を迫られた日本、ソ連に侵攻されたフィンランド、軍事クーデターとピノチェトの独裁政権に苦しんだチリ、クーデター失敗と大量虐殺を経験したインドネシア、東西分断とナチスの負の遺産に向き合ったドイツ、白豪主義の放棄とナショナル・アイデンティティの危機に直面したオーストラリア、そして現在進行中の危機に直面するアメリカと日本…。

で私としては勝手に、これらの危機を乗り越える何かしらの共通点を見出せるのかと思いきや、結論としてはそれぞれのケーススタディで終わっているというか、大きく横たわる共通点は見いだせなかったようです。つまり、機器に対する何かしらマニュアルめいた考え方や、成功原則的なモノは本書においては見出すことができず、いろんな危機があり色んな解決策があるよね、ということで本書の事例を肥やしとして未来に活かしていきましょう、的結論になっているような気がします。だから、私の印象としては、単に歴史をなぞった一冊という印象が強く、歴史に関してあまり関心が深くない私にとっては少し読みにくい一冊であったことを報告しておきます。

海外のいいところを手本とした日本

さて、本書の中で私が最も関心を持って読むことができたのが、日本に関する記述です。日本という国は、ペリー来航、明治維新など、まさにパラダイムシフトともいえるような国として、国民としての天地がひっくり返るような経験をしており、それを比較的スムースに受け入れていたりします。明治維新や戦後の日本において、次々と海外の良いものを取り入れ、変化していくさまが本書には網羅されていますが、これがなんとも頼もしい限り。計画的に、選択的に海外の良いところを取り入れ、強い日本を作っていった過程は私にとっては最大の見どころでした。

たとえば、明治時代の軍隊の近代化は、西洋の装備品を購入し、フランス人将校のちにドイツ人将校を招聘し、帝国陸軍の兵士を訓練させた。つづき、イギリス海軍を手本に、近代的海軍の編成への試行錯誤。陸軍はドイツを手本として軍隊を作り上げていった。こういったところを一国のノウハウに頼らないところがある意味日本らしい工夫と言えるかもしれません。その他さまざまな分野における日本の近代化に関する記述は、日本がどれほど柔軟に国難に対応してきたかを知る内容になっています。

また、ジャレド・ダイアモンドは日本の未来について、少子高齢化がネガティブな印象しか議論されていないが、実際には資源の少ない日本においてはこれはメリットでもあるということを主張しています。なるほど、海外の人からそう指摘されるとそれも大事な要素だと思わされます。

・・・ということで、本書全体としては国が遭遇した危機の列挙が中心の一冊ですが、歴史好きの方にとっては読みごたえのある一冊(実際は上下巻で二冊)かもしれません。

いやーー、読書って素晴らしいですね。

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