小説

赤い指




はじめの一行

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間もなく夕食という時になって、隆正はさっきのカステラが食べたいといいだした。松宮が土産に持ってきたものだ。
「こんな時間に食べてもいいのかい」松宮は紙袋を持ち上げながら訊いた。
「かまうもんか。腹が減ったら食べる、それが身体には一番いいんだ」
「しらないぜ、看護婦さんに叱られてもさあ」そう言いながらも年老いた叔父が食欲を示してくれたことが、松宮は嬉しかった。

赤い指(東野圭吾)

 

東野圭吾初心者な私は、本書をたまたまブックオフで見つけて買いました。
後から知ったのは、これが「加賀恭一郎シリーズ」とよばれる一連のシリーズ物の(確か)7冊目くらいになるものだったようです。とはいえ、まったく予備知識がなくとも不通に楽しめましたが、この冒頭のシーンは物語の重要なキーになる話のようですがイマイチ理解できませんでした。きっとシリーズを見ている人にとっては、過去作から続く何か下の物語を想起させるものなのでしょうね。

本書の内容

古畑任三郎方式

私はミステリーについてそんなに詳しいほうではないのですが、その乏しい語彙力でご紹介するなら本書の流れは「古畑任三郎方式」と説明します。古畑任三郎というのはご存知の方はご存知だと思いますが、かつての人気テレビシリーズ。田村正和扮する刑事古畑任三郎が難事件を次々解決するドラマですが、常に視聴者は犯人を知っています。犯行の目撃現場にいる視聴者は知っていて、劇中の警官たちは知らない犯人を追い詰めていく様子を見ていくような展開のドラマ。このように、読み手にとって犯人がはじめからわかっているサスペンスを勝手に「古畑任三郎方式」と呼んでいます。

本書の物語は、ある平凡な家庭で「庭に少女の死体」を見つけるところで本格的な物語が始まります。その過程は、少し冷めた関係の夫婦と、部屋から出てこないひきこもりの息子、そして認知症の世帯主の母という家族構成。庭に死体があるというのは、まあ普通このうちの誰かがその殺人に関わっている可能性が濃いわけで。そんな状況を前提に、まずは家族の中での犯人探しが始まります。そして犯人をかくまうために、なんとか自分たちの家庭が罪をかぶることの内容に、深夜その遺体を公園のトイレに捨てに行きます。

次の日その遺体は発見され、この周辺に刑事が聞き込みを始めるのですが、そのあとに出てくる加賀恭一郎の推理力と人間力。この辺りが本書の一番の魅力でしょう。もちろん最後には、タイトルとなった「赤い指」の意味も明かされます。

とてもたくさんの作品が映像化されている東野圭吾さんですが、本書も映像化されて阿部寛さんが主演されています。なんとなく映像化された作品の共通点を探っていくと、そこには必ずと言っていいほど人間ドラマがあるんですね。たんなる推理を楽しむ本というだけでなく、その犯人の周囲にある人間臭いドラマ。これが映像化される作品には必ずと言ってあるんじゃないかと思います。まさに東野圭吾さんの作品というのはそういった人間ドラマが見え隠れする作品が多いんじゃないかと思います。本書もいろいろと考えさせられるエンディングでした。

比較的読みやすく、サクッと読めてほどほどに胸を打つ。いろんなものがちょうどいい塩梅でミックスされた一冊じゃないかと思いました。

 

いやーーー、読書って素晴らしいですね。

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