小説

人生教習所(上)(下)




はじめの一行

第一部

小笠原諸島。
東京湾から千キロ南下した太平洋上の絶海にある。
東京都に所属する群島だ。品川陸運局の管轄でもあるので、人口二千五百人はどの小さな島のなかを『品川ナンバー』のクルマが我が物顔で走っている。
この島は、終戦直後の一九四六年から一九六八年まで実質的なアメリカ領だった。青い瞳に栗色の髪の『山田一郎』などという純然たる日本国籍を持つアングロサクソン及びポリネシア系の日本人だけが、百人ほど住んでいた。

人生教習所(上)(垣根涼介)

いきなり小笠原諸島のはなしです。
なんだそりゃ、と思うのですが、タイトルと突き合わせて考えてみると、どうやら「人生教習所」は小笠原諸島にあるらしいという推測が成り立ちそうです。
いきなり小笠原諸島。
著者は、相当な小笠原諸島好きなのでしょうか。

なるほど、本書の巻末には、物語はフィクションだが、ここで語られる小笠原諸島の島民の話はインタビューに基づくものとあります。
やっぱり、小笠原諸島好きなのかもしれません。

本書の内容

人生のやり直しを行うセミナー

本書のあらすじをお話しすると、怪しげな広告で集められた人々がこの物語の主人公です。
その怪しげな広告というのは、まあ人生をやり直すためのセミナーで、セミナー参加者にはしかるべき再就職先をあっせんしますよ、というもの。
高額セミナーなのですが、途中、選抜試験があってそれに合格できなかった人は、途中で脱落。
セミナー代金の一部は返還されますが、そこで終わりです。

でもって、このセミナーの協力企業がそうそうたるもので、なかなかの有名企業が並んでいます。

まあ、聞けば聞くほどアヤシイセミナーですが、ここに、入塾審査をを得て参加する人が集います。
元やくざの中年男性、東大生だけどひきこもりの青年、フリーライターをしているもの自分に自信がなさ過ぎて人間関係がうまくいかない女性・・・などなど。

こういった人たちが、一旦つまづいた人生をやり直そうと、このセミナーに集います。

限りなく社交性の低い参加者たち

さて、彼らは船で小笠原諸島に向かいます。その間の描写がされていますが、ほとんどの参加者はまったくもって社交性ゼロ。みんながみんな、周囲のことをけん制しあい、心の中でマウンティングしたり、葛藤したり。いろんな思いをもって、船で一度小笠原諸島を目指します。
現地では、原則相部屋。
そういう中では、社交性ゼロな彼らもまったく人に心を開かないわけにはいきません。

また、セミナーのカリキュラムはいったいどんなものかというと・・・
とここまで話してしまうと面白みがなくなってしまいそうなのでここではお話ししませんが、私にとってはどうでもいいように見えるセミナーの内容よりむしろ、その中で繰り広げられる共同生活の中で、参加者たちが心を開いていくことが大事なのかもしれません。

そんなこんなで過ごす小笠原での日々。

全体的に、物語はすごくスローペースだし、起伏のアップダウンはそんなにも激しいものではありません。
そこそこ長い物語であるにもかかわらず、なんとなく退屈することなく読み切ってしまったのは、なにか潜在意識に語り掛ける物語があるのかもしれません。

読後感も不思議な一冊でした。

いやーーー、読書って素晴らしいですね。

 

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