ノンフィクション

感染症はぼくらの社会をいかに変えてきたのか




はじめの一行

はじめにーーーぼくらはなぜ感染症を恐れるのか?

●マスクとぼくら

毎年、年末年始になると、日本ではマスク姿が激増する。いうまでもなくインフルエンザ対策であり、ノロウイルス・ロタウイルスによる感染性胃腸炎対策であり、さらに、近年では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策という性格が付けくわわった。
それでは、なぜマスクなのだろうか。
もちろん、ますくは感染症の予防に有効である。インフルエンザにせよ、感染性胃腸炎にせよ、COVID-19にせよ、最大の予防策は手洗いとうがいの励行であり、次いでマスクの着用である。

感染症はぼくらの社会をいかに変えてきたのか(小田中直樹)

あたりまえのようにマスクをつける昨今ではあるのですが、それを少し距離を置いてみている感じがなんとも興味深いまえがきに感じました。
マスクというものは、ビジュアル的にそれをやっていることがわかるのが、手洗いやうがいと違うところ。そういった”シグナル”が重視されていることにはたと気づかされます。

本書の内容

歴史のなかの感染症

本書の著者は、経済誌がご専門のようです。
しかし今回、コロナの大流行を受けて、急遽、感染症の歴史を紐解き、それを一冊の本にしたためたのが本書。
単なる読者にとってはどうでもいい話なのですが、今まではあまり深く関心を持たなかった感染症について、短期間で学び、著書にするという流れをどうこなしたか?というのが個人的関心ごとです。なにしろ、相当の文献を参照しているようです。あるいは、研究室の人たちを使って、がーっと資料をあさらせて、それをまとめていったのかな?と思う節もありますが、実際のところはどうなのでしょうか。
日本国内でコロナがだんだんと影響力を増してきたのが2020年の2月ごろじゃないかと思うのですが、本書の発売日は、2020年7月23日。半年足らずでこれだけの文献をちぇくし、それなりに一冊の本の流れを作ったというのは、いったい中の人はどうやってるんだ?と思わずにいられません。(私だけかもしれませんけど・・・苦笑)

で本書は、基本的には感染症に関する数々の書籍や文献を参照し、それをもとに社会にインパクトを与えたいくつかの感染症についてを取り上げます。
具体的にはペスト、天然痘、コレラ、インフルエンザ、その他の新興感染症(MRSA、エボラウイルス病、エイズ)といったものです。

感染症が変えた社会、変えなかった社会

こういった過去の感染爆発の歴史を紐解くことで、コロナ禍にあえぐい今とこれからを考えていこうと伊野がこれからの趣旨だと思います。
そう言う意味では例えば、ペストは荘園制度を終わらせ、公衆衛生というコンセプトが導入されるようになりました。また、天然痘のように種痘により渾然ツされた病気もありました。これらに至っては蒸気機関の発達とともに広がり、都市改造を促進しました。

一方、たとえばスペイン・インフルエンザが大流行した際、アメリカではマスクが義務化されたといいます。その中で、マスクを拒絶する人たちの運動だったりという事もおこったようです。この辺りは今も変わりませんね。
で、そのマスク習慣が定着したかというと、流行が去ると一気にマスク姿は見かけることがなくなったといいます。のど元過ぎれば・・・ってやつでしょうか。
考えてみれば、エイズなどにおいても医療機関においての様々な感染の配慮は進んだ一方、社会の人々はさほど大きな影響を受けなかったようにも思います。正常性バイアスとでもいうのでしょうか。あんがい人間というのは大きな影響を受けず、今までの生活を続ける物なんですね。

ということで、どんな病気でも、どんな時代でも、感染爆発を抑えるために、社会が変わる部分もあれば、変わらない部分もある。それが感染症の歴史の中で見いだせることなのかもしれません。

アフターコロナはどうなるのか?

恐らく本書を手に取った人の多くが気になるのが、こういった過去の歴史から考えられる未来予測でしょう。
残念ながら、本書の中でその強い主張はあとがきに少し書かれている程度です。
非常に抽象的に表現するなら、過去の歴史を見ていった結果、未来はどうなるかというと、よくわからないというのが現実ではないかと思います。
それくらいに、人間のふるまいというのはわりとバラエティに富んでいるという事。
いろんなことが「偶然」に起こるように思います。

考えてみれば、コロナにおいても日本ではインフルエンザと比べてもさほど多くの死者を出していないようです。
それでも相変わらず強く恐怖感が蔓延しているのは、たまたまなのかもしれないし、まだまだその底力を見切れていないという不安が先行しているからかもしれません。
これほどまでに人の考えに強い影響を与える以上、社会は変わらざるを得ないとは思うのですが、逆に先のスペイン・インフルエンザの例のように、ケロッとしてる状況もあるかもしれません。
それは読み切れない部分ではあるのですが、未来をどう予測するかはそれぞれが考える必要がありそうです。
本書はその手伝いをする情報を提供してくれます。

いやーーー、読書って素晴らしいですね。

 

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