小説

WILL




はじめの一行

受け入れられない両親の死

本書は、主人公の両親の死のシーンから始まります。
家業は、葬儀屋。
何とも皮肉な話ですが、娘が初めて仕事として挙げる葬儀が、自分の両親の葬儀だったという話。
齢18歳。
その現実が受け入れられないさまから、物語が始まります。

わかりません。
それが答えだった。
私はその答えに問い返すことすらしなかった。
「そうですか」
頷いた十八の私は、そのときいったい何に納得したのだろう。
あるいは、納得することそのものを拒絶していたのか。
そうなのかもしれない。
受け入れられるわけがなかった。
父と母がいた時間。それと地続きに父と母とがいない時間が突然訪れるなど、受け入れられるわけがなかった。
その事故がなぜ起こったのか。だから、そのときの私は、そんなものに答えを求めてはいなかったのだろう。そんな事故などなかった。家に帰れば父と母が私を待っている。今、ここに横たわる父と母は、私が暮らす世界とは違う時間が流れる、どこか知らない世界から迷い込んできた、私の知らない父と母だ。
いや、とその時の私は考えた。
迷い込んだのは私の方か。
「帰らなきゃ」
そうつぶやいたことは覚えている。

WILL(本多孝好)

本書の内容

次々と持ち込まれる問題

主人公の家業は葬儀屋。
寂れた商店街で、細々と経営している。
まあ、何とか食べていくには事欠かないものの、決して栄えているとはいいがたい。
主人公は女性ながら、この仕事にプライドをもって接している。
彼女の仕事は、故人を送ること。
そんな彼女のもとに、いくつかの困った話が持ち込まれる。

いずれも、彼女が葬儀を執り行った顧客である。
彼女としては、故人が安らかに眠ることができなければ、仕事を完遂した事にはならない。
そう考え、おせっかいにも、彼らに関わっていく。
時に幽霊話もあるわけですが、これまた、故人が安らかに眠っていない証拠とばかりに何とかしようとあれやこれやと動き回る。

最終的にその問題はどのように解決されるのか。
そこで見えてくる真実には、色々と考えさせられる話もある。

静か

本書の全体を包む空気間というのは、決して激しいものではありません。
何となくゆったりとしていて、どこかウェットな湿度がある。
それは決して不快なものではないのですが、ハリウッド映画にありがちなカラッとしているものではない。
スッキリ総会というわけではないものの、どこか靄のかかったようなムードの中で繰り広げられる物語。
最後にはちょっとしたどんでん返しもあるのだけど、それをみてなんだかホッとするような妙な安心感があります。

静かで、ウェットな物語が読みたい方にはお勧めです。

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