小説

最低。




はじめの一行

どことなく冷めた主人公

映像化された作品。
どことなくじっとりとした湿り気を感じさせる、短編の連作とでもいうのでしょうか。
この物語はこんな風に始まります。

「そんな悪い仕事じゃないと思うねんけどなぁ」
洋平は妙に甲高い声でそういうと、そのままねだるような視線を彩乃の口元に注いだ。悪い、仕事じゃない。震える声で力なく彩乃がオウム返しすると、洋平が余裕のある表情で頷いて笑った。---そんなわけ、ないじゃない。彩乃も弱く笑い返す。やけに酒臭い洋平の唇が触れると、先ほどまで同じ部位で感じていた陶器の滑らかさがふと蘇った。運ばれる料理といっしょに、彩乃は進められるがまま日本酒を嗜んでいたのだ。
ちびちびと、舐める、ように。
ーーー十二月の東京。
大通りに吹き込む風に首を縮め、腕を組みあうカップルが店選びをしているなか、二人は芸能人も御用達だという青山の一角にある創作和食店に立ち寄った。流れるようにテーブルに置かれる一品一品の、やわらかい白だしの味が繊細に伝わってくる。それは綾乃にとってさほど美味しいと思えるものではなかったが、---ふらりと酔いに、堕ちる、ようにーーーこくん、と。
洋平の誘いにうなずいてしまったのだ。

最低。(紗倉まな)

本書の内容

人気AV女優の処女作

男性なら知っている人は知っているであろう、人気AV女優紗倉まなさん。
ちょっと異色の著者ではあるのですが、そんな著者のプロフィールを差し引いてもそれなりに楽しめる作品ではないかと思います。
いくつかの短編が連なっています。

物語の中でスポットを当てられるのは、AV出演経験のある4人の登場人物。
誰もかれも、けっこうアップダウンのある人生を歩んでいるのですが、それをことさら強調することもない。
どこか淡々と語られていて、どこか冷ややかに自分の人生を俯瞰している。
そんな独特の文体にグイグイ引き込まれていくのは、たぶん私だけではないと思います。

作中では、母子の関係、男女の関係といった割と近しい立場の人間との深い心の葛藤が描かれています。

もとも「書く」ひとではなかった?

紗倉まなさんは、もともと書く人かといえば、そうでもなかったようです。
ある時、書いてみたいという意志を発したところ、コラムの連載がありこういった小説を発表するに至ったとか。
その最中には、いろいろと文章表現について、あれやこれやと試行錯誤があったようです。
本書では、独特の句読点の打ち方が、すごく味になっているように思います。

とはいえ、ここまで書くのは結構大変だったんだろうなぁ、と思います。

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