ノンフィクション

ゴースト・ボーイ




はじめの一行

 9年間意志疎通ができなかった少年

体を動かすこともできず、言葉を話すこともできない。
外部との意思疎通を全くとることができなかった少年。
彼の自伝はこんな書き出しで始まります。

『バーニー&フレンズ』(訳注:アメリカの子供向けテレビ番組)が、また始まった。ぼくはバーニーが嫌いだ。テーマソングも。「アルプス一万尺」の替え歌だなんて!
子どもたちがホップ!スキップ!ジャンプ!して、紫色のばかでかい恐竜の腕の中に飛び込んでいくのを見つめてから、ぼくは部屋に目をやった。ここの子たちはじっと床に横たわるか、だらりと椅子にへたり込んでいる。ぼくはベルトに支えられて車椅子にまっすぐ座っているけど、僕の身体だってみんなのと同じ。逃げ出すことのできない牢獄だ。話そうとしても、声が出ない。腕に「動け」と命じても、ぴくりともしない。
でも、ぼくとこの子たちには、一つだけ違いがある。ぼくの心は、牢獄から自由になろうとピョーンと高く飛び跳ね、さっと舞い降りては側転し、くるっと宙返りして、灰色に曇った世界に目の覚めるような美しい色の稲妻を起こすことbができる。だけど、それを知っている人はいない。伝えることができないからだ。誰もがぼくのことを、抜け殻だと思っている。だからこの9年間、来る日も来る日もここに座って、バーニーやライオン・キングを聞いていたのだ。そして「もう耐えられない」と思ったとき、『テレタビーズ』(訳注:イギリスの幼児向けテレビ番組)がやってきた。

ゴースト・ボーイ(マーティン・ピストリウス)

本書の内容

意識はないと思われていた

著者であるマーティンは、12歳のころ原因不明の病で体の自由がきかなくなった。
体だけでなく、言葉も話せず、ただ虚空を見つめるばかり。
医師は、彼の意識がないと診断し、ただの生ける木偶として扱われていました。

数年後、彼は目覚めた。
しかし、そのことを伝えるすべはない。
なにしろ声を出すことはおろか、身体をわずかに動かすことさえできなかったのだから。
そんな中、介護士によるいじめにあいながらも、そのことを訴えるすべもない。
自らの思いを伝えようにも、その手段を持たない。
いっそのことこのまま死んでしまえたら・・・と思うことも一度や二度ではなかったようです。
しかし、ある時、彼は少しずつ意思疎通の方法を学び始めました。

普通の人として

自分の意識があることを見つけてくれた人がいて、意志疎通を図ろうと努力をしてくれる。
そんな中少しずつ、彼は自信の意志を外に伝えることを学んでいった。
徐々に彼は、普通の人としての暮らしを取り戻そうと奮起する。
動かないからだとどうやって付き合っていくか。
子どものころにとまった、人としての経験をどう埋めていくか。
そして、今まで自分で物事を決めたことがないのに、どうやって決めていくのか。

常に、親や介護士に付き添われた人生から独り立ちし、仕事を得、生涯の伴侶を得る。
普通の人が普通にやることを一生懸命に進んでいく、マーティンの姿からは、さまざまなことを学び取れるのでは煮ないかと思います。
ぜひ多くの肩に手に取っていただきたい一冊。

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