小説

水鏡推理3 パレイドリア・フェイス




はじめの一行

1

国家公務員六十四万人いる。しかし、総合職試験に合格し中央省庁に採用されるエリートとなると、わずか一万五千人に限られる。
彼らキャリア官僚の人生とはすなわち、事務次官というポストを目指すための出世レースに他ならない。
入省時は幹部候補生。そこから本省勤務や海外留学、地方勤務、ほかの省庁への出向といった経験を積む。本省課長クラスまでは、同期入省の誰もが横並びで出世していく。
ところが以降、レースは荒れ模様になる。出世を逃し脱落したものから順に、省庁の地方支分部局や公共団体、外郭団体へと飛ばされていく。
最後まで勝ち残れば事務次官になれる。それまでに同期はすべて退職。地位に応じた待遇で再就職する。いわゆる天下りだった。
レースは序盤にちがいないが、そんな競争原理自体が性に合わない。文科省勤務、二十七歳の廣瀬秀洋はそう感じていた。

水鏡推理3 パレイドリア・フェイス(松岡圭祐)

登場人物の紹介までにこれまで行数を割くのは初めてじゃないでしょうか?
実は、この始まりの官僚の話。
今回の物語のメタファーとしては非常に重要なのかもしれません。

本書の内容

官僚の姿勢

このシリーズを通して、官僚の良からぬ姿勢というのがよく描かれています。今回の作品は、まさにそれを浮き彫りにしたような作品。
著者は、社会性を持たせるためにこういった記述を入れているのか、単に物語の奥行きを深めるために書いているのかは不明です。
ただまぁ、官僚とか、日本の在り方に、物語を通じていろいろと問題提起しているように言見えなくもない。
もともとこのシリーズは、研究費を確保するために国をだまし、国の税金からの予算をせしめようとする研究者たちを糾弾する物語。
そういう意味で、社会のうまくいっていない部分を暴いていくのは、物語としては普通の姿ですが、もしかしたらそこに著者の主張も入れ込められているのかもしれません。

瑞希が頼りない?

さて、私としては主人公の水鏡瑞希はいつもさっそうとし、どんなねつ造でも暴く姿をイメージしていました。
しかし、今作においては、少し弱い(笑)
なぜか、研究者の言う内容を全く理解できない瑞希がいる。
まあ、体当たりなところは変わりませんが、どことなくいつもより弱い瑞希を感じるのは私だけでしょうか。
冒頭の官僚・廣瀬との関係(?)もなんとなく、今までのほかの登場人物と違うような・・・

とはいえ、物語はいつも以上に壮大なストーリー。
だんだんと面白くなってくる印象があります。

ちなみにタイトルの、パレイドリア・フェイスってのは、よく心霊写真なんかの説明にある、「点が三つあれば人の顔に見える」という心理効果のことらしい。
さて、どんなパレイドリア・フェイスが出てくるかは、見てみてのお楽しみということで。

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