はじめの一行
麻子様
先日は結婚式にご出席くださりありがとうございました。
あの田舎町から押し掛けてきた親戚縁者たちを見て、当時のことを思い出し、不愉快な思いをされているのではないかと、式のあいだじゅう気になっておりました。あの人たちは自分たちの無遠慮な行動にまったく気付いていないのですから。
空気がきれい。それだけが取り柄のあの町が、本当に何もないところだったということに気付いたのは、高校を卒業し、東京の女子大に進学した七年前です。
「麻子様」なるこの時点では謎の人物に対する手紙。
初めの時点では、一行一行が謎ばかりです。
読み手としては、空白の知識を求めてついつい読み進めてしまいそうな書き出しです。
本書の内容
複雑に絡み合う事件
本書は割と早い段階で、ある事件が明かされます。
それはこの本の中心になる出来事なのですが、まずそれはこの手紙の中で明かされます。
手紙の書き主から見た事件。
そして事件は、そこに関わった様々な人たちの視点から描かれていきます。
結果として、ここで起こっていることは、その中心的な事件だけではないことが次第に明らかになっていきます。
手紙をベースとするこういった書き出しから始まる小説は、どことなく謎を解くカケラを集めていくような感じで、ついつい没頭してしまいます。
全体を通して、がっつり盛り上がるというより、じわりじわりと話が進んでいき、ことが明るみになっていく過程がこの本のだいご味なのかもしれません。
犠牲者は子供
じつはたまたまなのかもしれませんが、私が読んだ湊かなえさんの本はすべて子どもが犠牲者となるモノばかり。
それだけに、けっこう重い。
この本も、派手な展開はないものの、ずっとそのジトっとした重さがのしかかってきます。
とくに、登場人物の心理がうかがい知れる病者の中で、読者は踊らされるのかもしれません。
読んだ後、スカッとした感はないのですが、どこかホッとしたというか、ああ疑問が解決できたというちょっとした達成感は感じます。
グイグイ引き込まれるという印象は薄かったのですが、気が付けば隙間時間にこの本を手に取ってる自分を感じたというのが正直な感想。
つまらなくはないのですが、ドキドキはらはらというわけでもない。
なんとも不思議な読後感を感じ取った一冊です。
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