小説

悪魔と呼ばれた男




はじめの一行

プロローグ

雨に濡れた墓石は、悲しみをたたえているようだったーー。
天海志津香は、持参した白い菊の花をそっと手向け、目を閉じて合掌した。
死後の世界があるとは思っていない。だから、こんな風に黙とうしたところで、その思いが故人に届くことはない。
では、自分は何をしているのかーーー恐らくは自己満足なのだろう。
忘れていないという意志表示。或いは、こうして変わらず墓を訪れることで、自分が死者を悼しむことのできる人間であるということを確認している。

悪魔と呼ばれた男(神永学)

ちょっと自分自身を皮肉った始まり。
この天海志津香なる人物の情報のはじめがこのような皮肉めいたつぶやきとは。
なんだかちょっとダークな物語を予感させられます。
このシーンは後でわかるのですが、とても物語の中でも重要なシーンと言えるかもしれません。
それを一番最初にもってきたところに、本作の意図が微妙に見えてくるのかもしれません。

本書の内容

心霊探偵八雲をほうふつとさせるキャラ?

もともと妻の勧めもあって、神永さんの作品は心霊探偵八雲をけっこう楽しく読んでいた時期があります。
あるタイミングから、妻は「買ってきたよ」と八雲のシリーズ作を渡してくれることもなくなり、八雲とお父さんの関係はどうなったのだろう?
というところが未だに気がかりな私。

で、本作はそのシリーズとは全く違うお話です。
ただ、ちょっと登場人物に、近いにおいを感じています。
どこか天真爛漫というか、すごくフレッシュなイメージのある天海志津香という女性キャラ。
そこにかぶせるように、どこかつかみどころのないイケメンキャラがかぶさる。
この構図、なんとなく八雲とにてるかも、なんて思うのは私だけではないんでしょうね。

 

ま、ただ、役割的にはずいぶん違います。
割とまじめな刑事である天海にたいして、イケメン君は特殊なプロファイリングチームを率いてる。
そもそも彼の本心が今一つ見えない中で、天海はけっこう翻弄されます。
そして、事件に巻き込まれてしまいます。

本作はシリアルキラーがテーマ。
なんとも宗教的な意味のありそうな形の殺人現場。
そこの追跡から始まるのですが、捜査本部とは全く違う方法で操作を行うチームがその天海の関わるチーム。
といっても数人しかいないんですが、こいつらが最強なわけです。

で、最後にはあんなことになって、こんなことにもなって・・・とけっこうなどんでん返しが仕込まれています。
話としては、じーーんと胸に残るタイプの物ではありませんが、エンターテイメント的にはけっこう楽しかったと思います。

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