はじめの一行
はじめに 自分のために書くということ
あなたはゴリラですか?
自分一人のために、料理を作って食べたことがあるだろうか。
ここで、「ないです」と言われたら、この本は出だしで転んでしまう。そういう人は寝転がって読んでいただければ幸いである。いずれにせよ購入することが大切だ。
三十年以上も前の話だ。ある雑誌で「あなたの職業適性診断YES・NOチャート」というものがあった。まだ中学生だった私は、「自分はどんな仕事に向いているのかな?」というピュアな気持ちで職業適性を診断したくなった。さっそく始めてみた。
なかなかに人を食ったまえがきです。
あなたはゴリラですか?ときかれて「んなわけないやろ」と心で突っ込みつつ、その真意はどこにある?
そんな風に次を読みたくなるはじまりです。
著者の方は、24年間大手広告代理店でコピーライターをやっていたようです。
だから人の目に留まる文章を書くということをとても無意識に意識するような習性になっているのでしょう。
本書の内容
文章術とは言うけれど・・・
タイトルは文章術とありますが、具体的な文章の書き方(ノウハウ的なこと)は基本かいてありません。
いえ、実は、本文に挟まれる「コラム」の形式で、具体的なノウハウも書かれています。
ただオマケ的な感じで、本文は非常にそぎ落とされた内容。
コピーライターということもあって、短い文章に本質があって、紙面を埋めるためにちょっとしたエピソードが加えられたり、ちょっとした無駄話がちりばめられてあるという気がします。
これを「文章とはこうやって書くものだ!」「バズる文章はこう書け!」という内容を期待して買った人は、なるほどがっかりするかもしれません。
ただ私ぐらいの年になってくると、もっともらしいノウハウ本は意外と再現性が乏しくて、初速の効果は比較的上がりやすいけど結局極めるには鍛錬が必要という本質を経験から知っていたりします。
だから、即座に魔法がかかったように何かが起こるとはそもそも期待していない。
そして、読まれる文章というのは、文章の上手い下手ではないのです。
そういった結論を持っている人が読むと、ああなるほど、と思える個所は沢山出てきたりします。
一方、インスタントに何かができるようなノウハウが欲しい人には、じれったいんだろうなぁと思います。
文章もまた「発明」「発見」の世界
私なりに受け取った本書の主張。
そのうちの一つは、文章もまた「発明」「発見」の世界であって、すでに誰かが論じた話をなぞっても仕方がない、ということ。
そしてそれを知るためには、関連した書物を徹底的に調べる必要があります。
そのうえで事実をまずは把握し、そのうえで、誰も書いていない、誰も見ていない視点を提供する。
そうでなければ、文章は価値を持たない、的なことを言っていたように思います。
クリエイティブな世界では、他人のコトバをこねくり回しても仕方がない、と。
ああ、たしかに。
しかし、けっこう大変なことですよ。
実は私もちょこっとライターっぽい仕事をしたことがあります。
まあはっきり言って、やっつけ仕事でも十分できちゃうわけです。
なんでかというと、そもそも求められているのがそのクオリティだから。
すると当然単価も安い。
しかし、唯一無二の”随筆”となると、そうそう手に入らない。
そもそもそういったものを残していくことで、自らの価値を高めていくっていうのが商業的な成功をイメージした文章術なのかもしれません。
なかなかに、ストイックな世界です。
緩くて厳しい一冊。
おススメです。
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月々たった380円で雑誌が読み放題。
たとえば、コピーライティングで、女性誌・男性誌などをぱらぱらと見たいとか、
特定の趣味の人の話題を知りたいとか、そういったときにはとても役に立ちます。
私も契約して、どうしても参加しなければならないつまらない会議の時には、
これをiPadでぱらぱら見てます(笑)
メジャーな雑誌はけっこうそろっているので、おすすめです。
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