ビジネス書

本業転換――既存事業に縛られた会社に未来はあるか




はじめの一行

はじめに

電気自動車が登場し、ガソリン車の生産で培ってきた日本企業のすり合わせ技術が、モジュール化の波に呑まれてしまうかもしれない。
また自動運転が実現すれば、自動車産業だけでなく、運輸業や保険業のあり方も激変する可能性がある。
コンピューターはオンプレミス(情報システムを自社内で構築・運用)からクラウド化が急速に進み、メインフレーム事業の縮小やSEの大量失業が予想されている(そのため富士通では、SEの職種転換を組織的に進めている)。

本業転換――既存事業に縛られた会社に未来はあるか(山田 英夫、手嶋 友希)

この手の業種などの分析を行った本の定番の書き出しは、テーマとなる内容を推し進める社会情勢を列挙することだと思います。
本書もそこに則り、時代の変化が今まさに起こっていることを伝え、事例研究としての本文に入って行く、という構成をとってると思います。

本書の内容

4種の企業における比較

本書の中心は、以下の4業種8企業の比較となります。

1 富士フイルムホールディングス vs. イーストマン・コダック
2 ブラザー工業 vs. シルバー精工
3 日清紡ホールディングス vs. カネボウ
4 JVCケンウッド vs. 山水電気

いずれも、片方は「華麗なる転身」を遂げた企業であり、片方は時代に取り残されてその力を失った企業という位置づけにはなります。
本書の構成としては、まずは双方の経緯を示し、その後残った企業と消えた企業の違いをあきらかにする、という形。

これを見て感じるのは、ダメになった企業もたんに古い事業にしがみついていたわけではなかったということ。
それなりに、転換を図るべく、頑張っていたんですね。
ただその方向性だったり、タイミングの問題でうまくいかなかった。

たとえば、フィルムカメラがたった10年ほどで衰退していく過程の中で、実は富士フィルムよりもコダックのほうが先にデジカメの開発は行っていた。
しかし、コダックは自分たちのビジネスを失うカリバニゼーションを避けようとその発表を遅らせました。
その間に、ソニーがデジカメを発表し、富士は迅速に追随し、自社製品をヒットさせた。
一方、コダックはその波には乗り切れず、憂き目にあう。
繰り返しますがコダックは、そんな動きをする前にすでにデジカメの開発を終えていたにもかかわらず、です。

最後は運?

こんな事例研究を見ていくにつけ、一つは大胆な前進思考はやはり大事だな、と感じました。
自分達の今の本業をなくすことを恐れてはいけない、ということ。
そしてさらに言うなら、本業が好調な時こそ、次の一歩を踏み出す必要があるということ。
これは、現経営陣における、未来への投資であり、後進への責任でもあると思います。
今だけよければいいというわけではないわけです。

ということで、大企業ともなればたいていのところはそんなプロジェクトも行うわけですが、それが実を結ぶこともあれば結ばないこともある。
そこにはやはり運もあるような気がします。

企業は大胆に前進せよ、という教訓はあるものの、それが100%生きるとは限らない。
どこが経営のむずかしくも楽しいところかもしれません。

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