ビジネス書

マーケティング・ジャーニー 変容する世界で稼ぎ続ける羅針盤




はじめの一行

はじめに●変容する世界で稼ぎ続ける羅針盤

本書は、すべての人を、優れたマーケッターになるよう、駆り立てる本である。
なぜマーケッターなのか。
それは、この時代の変わり目において、マーケッターは極めて価値ある職業だからだ。
図0-1を見ていただきたい。職種と年齢との関係をまとめたものだが、マーケティングは、唯一、年齢とともに年収ランキングが上がっていく職種だ。

マーケティング・ジャーニー 変容する世界で稼ぎ続ける羅針盤(神田昌典)

一時のあおりっぽい雰囲気の文章というよりも、落ち着きがあるのに次が読みたくなる。そんなまえがきのような気がします。
あとがきには、中学、高校生にぜひ読んでもらいたいとあります。つまり、ここでいう「すべての人」というのは単にビジネスパースンのみならず、どんな年齢層の人も、学生も、あまねく読んでほしいということらしい。

著者は、本を通じて世の中を変えていきたいと考えているように感じました。

本書の内容

マーケティングピラミッド

近年、マーケティングというと、割と安直な「売る方法」みたいな理解が広まってきているように思います。それは良くも悪くも、本書の著者、神田昌典氏がマーケティングという言葉を一般的にしたこととの関連性はかなりあるように思います。かつては、マーケティングといえば、市場調査だったものが今や、売る文章の書き方っぽいとらえられ方をしがち。
そんな流れを作った著者が、今度は、マーケティングこそビジネスの本質であり、社会変革の中心にある、という認識を広めようとしているのが本書なのではないか、と私は考えています。

なるほど、マーケティングを突き詰めていくと、売り手ではなく、顧客の視点に立つ必要があります。そうすると、売らんがな、のメッセージや商品開発ではなく、本当に世の中が必要なものを、必要な形で提供する必要がある、という思いにつながります。多くの人が、そういった思考に至ると、ビジネスは社会貢献になっていく。そんな理想が本書の裏テーマではないかと思います。

さて、そんな本書のテーマの中に、マーケティングピラミッドという考え方があります。これはおそらく、著者の神田昌典氏オリジナルのフレームワークですが、ここには社会から応援される事業を作るというところへ向かうのに、大きく分けて三つのステップを想定しています。

第一ステージ(戦略) 収益をもたらすビジネスモデルを作る道筋
第二ステージ(戦術) 顧客を創造するメッセージを作る道筋
第三ステージ(マネジメント) 社会を形成するリーダーを作る道筋

神田昌典氏のフレームワークにおいては、それぞれのステージに8つのテーマがあり、トータル24個のテーマがあるとします。本書に関しては、そのうちの第一ステージの戦略、つまりビジネスモデルにフォーカスした内容となっています。

そのざっくりした流れを見ていくと…

個人として【市場】についての変化に気づく。市場環境に変化が生じ、思ったように売れなくなる。
思考を始め【隙間】を探しに行くことになる。
そのためには【顧客】の痛みを理解することが必要で、
社会的なフェーズとしての【着想】、つまり今までの思い込みを手放してひらめきを得ることになります。

そして、さまざまな人との【調整】を通じて提案を具体化し、【経済】つまり資金源を確保・設計する。
【協力】してくれる人を巻き込んでいき、メンバーそれぞれが自分たちのこれまでの限界を【突破】していく。

さて、ここまで読んだ方のうち、勘のいい方はきっと気づかれていると思うのですが、この話の流れは、かの有名な「ヒーローズ・ジャーニー」です。あのスターウォーズの物語の基盤になっているという、世界の神話のパターン。
世界中で親しまれるヒーローズ・ジャーニーは主人公の成長物語。つまり、本書における「マーケティング・ジャーニー」は、マーケッターとなった読者が、神話の主人公となって成長を果たす、というメタファーになっているわけです。

そして、先述した三つのステージというのは、この成長物語を一話完結するごとに上昇し、上のステージをプレイしていくことでますますビジネスが上昇していく、というからくりになっているようです。

マーケティングジャーニー8つのエリア

市場

本書ではこれからの市場を、各地域の伝統的な強みを最新技術と組み合わせて、未来を構想していく絶好のチャンスだといいます。その象徴といえるのが2018年に決定された大阪万博。さらに、ハチロク世代(1986年~1987年生まれの人たち)がこれから70年間を動かすキーになるといいます。

そして彼らが育ったのはポケモンという文化。これは例えば1960年代に生まれた私はウルトラマン世代ですが、敵と味方がはっきりしていました。しかし、ポケモンには明確な敵はいません。

こういった状況を背景に見てみると、たとえばあるデータによると50代が創業した場合、30代と比べてトップ0.1%の入る確率が1.8倍ほど高いそうです。時代としてはハチロクの時代ではあるものの、こういった経験者をうまく活用していくことで世代での分断をおこさないほうが、ビジネスとしてうまく回りやすいということもあるようです。

隙間

この章に関して言えば、各区切りごとに秀逸な質問が掲載されていたので、それをピックアップしてみます。

大好きな、しかし売れていない商品を売ってみる
覆すべき業界常識はないか?
他社が喉から手が出るほど欲しいものを、自社の中に探す
あなたが一つのエネルギーを注ぎこめる、一つの商品・サービスは?

全体を通してみていくと、もう自分たちの業界は古くてだめだ、別の事業を、と考えたくなる経営者も多いかもしれませんが、まだまだ食う風の余地はあるんじゃないですか、というサジェスチョンに富んでいるように思います。
たとえば、売れていない商品に関して言うと、「文庫X」の話が出てきます。

これは、ある本を、ある所店員さんがカバーをかけて、タイトルや著者が見えなくしました。
実際のところ、決して有名な著者でもなければ、有名な本でもありません。
しかしそのカバーを見ると、所店員さんの思いのたけが書かれていて、その書店員の言葉をもとに買うか買わないかを判断する、という本の売り方をしたのです。

その結果、それまでさほど売れていなかった本が大ヒット。当初はその書店だけでの試みだったのが、一台ムーブメントとなり、ヒット作を作りました。出版業界も不況にあえいでいるといいますが、売り方ひとつで状況はそれほどまでに変わるということのいい事例だと思います。

私たちは、自分たちの商品の良さを、本当に届けられていないのかもしれないな、と思わされた事例です。

顧客

本章のはじめに「コマーシャルインサイト」という話が出てきます。これは、商品を全く変えることで、売り上げが劇的に上がった話です。

ここで語られるのはある企業の事例です。厨房機器のメーカーがもともと、エコロジーであったり、おいしさを狙って開発した製品がありました。これは大ヒットしましたが、徐々に多くの企業の参入が相次ぎ、コストや利便性といったフィールドで各社しのぎを削っていました。しかし、社内での内省を深めた結果、実はこの製品のおかげで顧客は「安全性」「雇用の定着」などといったベネフィットを実感しているということがわかりました。さらに調べてみると、そもそもこの製品は、外食産業の中では神といわれる経営者のオファーを受けて開発をしたものだったといいます。そういった歴史と、今まで持っていなかった視点をもとにセールススタイルを変えると、次々と商談が決まることがわかりました。

本書において、神田昌典氏は
専門家である本人自身が「自分が間違っていた」と思わされるような気付きこそが、「コマーシャルインサイト」である、と定義しています。これを見出せば、事業の発展性は広がります。そしてそのためには、顧客の痛みに寄り添うことが重要だ、と説きます。

着想

ひらめきを得る、という部分に関しては非常に難しい問題でもあり、さまざまな手法があります。
その中でも本書では、著者の神田昌典氏が開発したフューチャーマッピング、ウィン・ウェンガー氏が開発したジーニアス・コードといったものが取り上げられています。いずれも、従来とは全く違った手法で、過去の知識などとは分断された形で未来を描く、ちょっとばかりぶっ飛んだ方法論。

アイデアの次元を変えたいなら、学んでおきたいスキルです。(実はわたくし、フューチャーマッピングはその前身である全脳思考を受講、ジーニアス・コードはホームスタディーセットを購入しました)

調整

何かしらの着想をえたら、それを実行に移す調整段階に入ります。こういった中で、紹介されているのは一つは読書会。著者の神田昌典氏は、2011年からRead For Actionという読書会の協会を作り、その普及に努めておられます。この読書会は、例えば一冊の本をネタに、そこに集う人たちが著者との対話を愉しむかのように気付きをシェアする形で進められますが、これが実は人と人をつなぐのに非常に良い、といいます。

たとえば、部門間の調整というのはそれぞれの世界観があり難しいものですが、こういった形で本という一つの媒体をもとに語り合うことでそれが実現できたりします。また、ファシリテーターはそのファシリテーション能力を磨くことができ、一挙両得。

もう一つは、「きこり体験」についての紹介がありました。一見、非常にしんどい仕事で誰もやりたがらないだろう、ということを公に募集してみたら、きこり一日体験に多数の人の申し込みがあったといいます。知らない世界を覗いてみたい、という人は案外多いようです。そういった形で、さまざまなアレンジで人を集め、調整し、動かす。そんなフェイズといえそうです。

経済

この説は、どう社会の中に自分の会社が組み込まれていくか、ということを考えていくフェーズ。たとえば、検索に耐えるため、それに応じた社名をつける、利用者の評価を高めるためにやるべきこと、営業法など。

協力

子のフェーズは主に社内における協力体制について考えるシーン。たとえば、障がいを持った方がその能力を生かすための工夫をされた企業の事例などが紹介されています。興味深いのが、多くの協力を取り付ける一つの入り口として、イベントを開催するということ。たとえば、マルケトというマーケティング・オートメーションの仕組みを提供する会社は、かなり大規模なイベントを行い、そこには多くの人が集うそうです。

突破

このフェーズでは、ビジネスをキーに社会を変えていこう。そんないざないにみえました。

まとめ

本書のテーマは、組織がマーケティングを通じて、組織として質的成長を果たすということが目的。つまり、単に売らんがな、という精神ではなく、売るという技術をベースに組織を社会変革の道具として活用していくことに自然と向かうように設計されています。そういう意味では、マーケティングのノウハウ書というわけではありませんが、ふんだんの事例がきっと何かしらのヒントをもたらすと思います。

基本的には、こう書けば売れる、という内容の本ではないので、そこの誤解がないようにしておくと、ミスマッチが起こりにくいと思います。

 

いやーー、読書ってすばらしいですね。

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「人類の目覚め」へのガイドブック 「実存的変容」に向かう小さな一歩を踏み出そう前のページ

自主経営組織のはじめ方――現場で決めるチームをつくる次のページ

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