目次
はじめの一行
プロローグ
人は一日に約70回、人生を左右する選択をしているといわれています。
今日のランチに肉を食べるか、魚にするか。
新規の顧客へのアプローチを電話にするか、アポなしで訪問するか。
気になる異性に声をかけるか、かけないか。
依頼のあった仕事を受けるか、断るか、条件交渉をするか。
同僚からの飲みの誘いを受けるか、先に帰るか。
会社を辞めるか、もう少し様子を見るか、このまま続けるか。
はじめに具体的な数字を持ってきてインパクトを高めて、次に具体例を挙げて、「ああ、あるある」と共感させる。いわば前書きの王道といえるものかもしれませんね。
本書の内容
後悔しない選択
本書において、冒頭に一つの結論が提示されています。それは「正しい選択」は存在しない、ということです。そもそも、未来は不確定ですから、その選択が正しいか正しくないかは、単にその選択のみが及ぼす結果だけではありません。そこでメンタリストDaigoさんが設定した結論は「後悔しない選択」ということです。そしてこの後悔しない選択をすることが本書の中心テーマになります。
この後悔しない選択が難しい背景には、私たちの多くが間違った常識を信じているからだといいます。それは具体的には・・・
間違った常識①「正しい選択がある」
間違った常識②「今ある成功は、自分の過去の選択でできている」
間違った常識③「選択肢は多ければ多いほど可能性も広がる」
まず、私たちは、どこかに正しい選択があると信じています。これは私の経験でいうと、例えば営業という仕事があるならば、正しい営業の仕方がある、と考えがちです。そしてそれから寸分たがわぬ方法をとらないからうまくいかないのだ、という認識をします。だから、セールスの本や研修が結構たくさんあるのですが、絶対的に正しいやり方などはこの世には存在せず、ノウハウはガイドにはなれど結論ではない、というのが私の個人的な感覚。その感覚とすごく合致するのが、「正しい選択がある」というのは幻想である、という本書の主張です。
それこそ「告白すべきか、せざるべきか」などという問いに正しい選択があるはずもありません。結果として「告白してすっきりしたい」ならすればいいし、けど「恋愛を成就させたい」という結果が期待値ならば、それを完全にかなえる方法などありません。だから、正しい選択などない、といえます。
二番目の「過去の選択」に関しては、「自己奉仕バイアス」というものを考慮する必要があります。実際に過去の成功を分析したとき、自分の選択だったと思い込んでいるものも、意外とそうでないものは結構あるはずです。幸か不幸か、うまくいくか行かないかは、案外「たまたま」という要素が多いのではないでしょうか。なんとなく、自分で決めてここまで来た、と思う一方でうまくいかなかったものは、環境や自分以外の何かのせいにする、という心のクセが人間にはあります。これは人が、自分が木津つかないための自己防衛ホウン脳からくるものですが、私たちは案外過去を正しく認識していないものだといいます。
三番目の選択肢に至っては、行動経済学の研究によって明らかにされるのが、選択肢が増えすぎると人は不幸になるということが明らかにされているそうです。選択肢が増えると、保留することで時間という試算を無駄に失います。さらには、別の選択肢を選んでいたら・・・などという思いにとらわれたり、選ぶべきであったかもしれない選択肢を見過ごし、現状維持を選ぶ可能性も増えていきます。
5つの意思決定スタイル
人には意思決定する際のパターンがあるといいます。本書ではそれを次の五つに分類しています。
①合理的スタイル(論理的に考えて選択)31.1%
②直感的スタイル(データよりm感覚を重視)34.4%
③依存的スタイル(他人の意見を重視)8.6%
④回避的スタイル(決定を先延ばしに)22.5%
⑤自発的スタイル(考えるよりも結論を急ぐ)3.3%
このうち比較的公開のない選択を行えるのが、合理的スタイル。逆に最もあぶないのが直感的スタイルといいます。そこで、後悔しない選択をするために、意識して合理的スタイルをとることを進めます。そのためにはいったん決定について振り返り、楽な方向に流されず、長期的視野に立ち、小さなテストを行い、過去の失敗から学ぶ。そんなことに意識を向けるとよさそうです。パッと決めて終了ではなく、「ちょっとまてよ・・・」という感覚が大事ということなのでしょう。
ここで個人的な見解を申し上げますと、私の知る人の中で何人か直感的スタイルの方がいます。この方たち、自分でもいつも「直感で決めていつも後悔する」といっています。しかしどうも、それを直そうとする意図が見えません。どうやら、そんな自分がいとおしい、という人が多いような気がします。だからこの手のアドバイスは結局無効になるわけです。きっとこういう本を読まない人が多い気もしますが。もし、直感的スタイルで生きている人がそれに不都合を感じ、自分を変えたいと考えるなら、まずは人のアドバイスをしっかりと聞いて実行することから始めるのが案外近道かもしれないな、と思います。
アイビー・リー・メソッド
本書では、「アイビー・リー・メソッド」というシンプルな行動習慣が紹介されています。割とさらっと紹介されていますが、やってみるとこれがけっこうパワフルなのです。まずはそのやり方をお伝えします。
①紙に「今日やるべき事」を6つ目もします。
②その6項目を重要だと思われる順に1、2、3、4、5、6と番号を振る。
③このメモの順番に従って作業を進める。
④もし全部できなかったら、悔やむことなく忘れる。
⑤翌日、新たな6つの項目を新しくメモする。
⑥①~⑤を丁寧に繰り返す。
ああ、これなら簡単そうだ、自分にもできそうだ、と思いませんか?
まずは習慣化にあたって、私は紙に書くということをとりあえずはスマホのカレンダーへの書き込みにしています。そしてこの重要度の優先順位付けは結構大事だと思います。私たちはどちらかというと、重要度は言うほどは高くないけど緊急な仕事を優先しがちです。しかし、重要だと思ったことを常に意識する意味で、こういったリストを使うことはけっこう効果があります。
そしてもう一つのポイントは、全部できなかったときに「反省」するのではなく、悔やむことなく忘れる。出来なかったことをくよくよ悔いていると、行動の妨げになります。だからむしろ、できたことをたたえる方向がいいと思います。一つ一つリストを消していくのは快感ですしね。
そして、明日になれば、明日の新たなやるべきリストを作る。日々刻々と変わる中で、必ずしも前にできていなかったことをここに持ち越す必要はないわけです。相変わらずやるべきな仕事であれば、今日のタスクに加えればいいし、そうでなくなっていればもはやタスクに加える必要すらない。
こういったシンプルな行動計画を作ることで、まず一日の間で「迷う」ことがなくなります。だから一日のなかでの空白が減ります。そして、毎日リセットされるので、変な重荷にもなりません。出来ないことはできないでOKなところがいい。そして、日中の大事な時間に、「次は何をすべきか」なんて考えることで、脳のリソースを浪費しなくて済みます。ぜひ、習慣にしたいところです。
総合的に見ていくと・・・
さて、本書にはほかにも、科学的なエビデンスをもとにした様々な「後悔しない選択」を行う方法が掲載されています。
それらをすごく大雑把にまとめると、「自分の感覚を信頼してはいけない」ということではないかと思うのです。実は心理学の世界に入り込んでいくと、人が実に様々な物事のとらえ方の偏りを持っていることを学ぶことになります。
例えば一つのことが正しいと信じ込めば、それを疑わなくなってしまいます。人と議論をしていても、「どこをどう考えても自分の意見が間違っているはずがない」と思えてくるのです。いえ、むしろ、違った意見の人と議論をすると、そういったおもいをよりきょうかするけいこうがあるのかもしれません。そうすると、いったい何が正しいの、ということになります。そんなときに、本書は自分を客観視することを進めています。それはたとえば、データを集めるとか、反対意見を集めるとか、自分を俯瞰してみてみるとか、相手の立場に自分をおいてみてみるとか、そういった具体的方法の提案がありますが、そうやって自分以外の視点を持つことが、本書の最大のテーマではないかと思います。
自分を信じて生きていくということも確かに大事なのですが、一方で、自分の思い込みの殻を破っていくこともとても大事なことだと思います。本書はそんなきっかけを意識し始める入り口になるかもしれない本といえそうです。
いやーーー、読書ってすばらしいですね。
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