小説

水族館ガール3




はじめの一行

プロローグ

帰ってくる。もうすぐ先輩が出向から帰ってくる。
由香は自宅アパートで浮かれていた。
オルゴールのキス人形を手にとる。ベッド横の出窓に置いた。麦わら帽子の男の子とワンピースの女の子。男の子は先輩で、女の子は私。誰がなんといおうと、このオルゴールは梶良平と嶋由香の世界なのだ。
春めく出窓は、その舞台として最適。では、スタート。

水族館ガール3(木宮条太郎)

なんだか春ですねぇ。
シリーズを読んでいる人にとっては、「ああ、由香ちゃん浮かれてるなぁ」という印象を受けるし、そうでない人はここでさりげなく主役の紹介。うまい具合に名前が出てきてますね。
物語の始まりとしてはのどかな感じなのですが、このあと、色々と事件が起こるわけです。(事件と言っても殺人事件とかそういうたぐいのものではありませんけど)

本書の内容

いくつかの関門を乗り越える

今回の場面設定は、役所勤めの延長で移籍した由香が、アクアパークという水族館で繰り広げるドタバタお仕事小説という感じです。そこで出会った武骨でテレ屋な先輩(梶良平)とは恋仲(たぶん)。なのに、2人が近づこうとすると途端に、梶は海遊ミュージアムという関西の水族館への長期出張が決まり今は離れ離れ。その期間を終えて帰ってくるはずだったのですが、その出張は延長されます。
一方、由香の方も動きがあります。
今まで、イルカの担当だったところを、イルカ担当を後輩の「ひょろ」に任せ、アクアパーク全体の「もう一歩プロジェクト」(←名称は記憶が正しいか不安ですが)の指揮を執ることになります。そのプロジェクトというのは、今の状態を良しとせず、さらなる改善をそれぞれが考え、実行に移すというもの。そういった大きなプロジェクトを指揮すると同時に、たとえばラッコの飼育に関わったり、マンボウの水槽づくりに関わったり、とてんやわんや。そのなかで、かなりヤバイ失敗もやらかすのですが、具体的な内容まではここでは触れないようにします。

そんな関門を抜け、一段一段階段を上る由香。
しかし、一方で水族館としての難しい問題も横たわります。「かわいい」ということでちやほやされる水族もいれば、地味だからと注目されない水族もいます。しかし、実際に生き物は「かわいさを演出」するために生きているわけではない。しかしそこに人間の主観が入ることで、動物の本来の姿が見えにくくなることへの問題意識。とはいえ、そういったかわいさがなければ水族館という施設は存在しないというジレンマ。そんな大きなテーマを抱えつつ、中の人は日々様々な問題と格闘します。

さて、主人公の由香はこの3年間で、次々と重要な仕事を任され、それをこなしていきます。それは実は将来に向けた伏線となっているようです。詳しくは次の会にゆだねられている感じですが、日々の努力の先にある大きな物語も、本書の魅力の一つ。

全体的に軽いタッチで描かれていて読みやすい一冊ですから、気楽に読めてためになる。そんな一冊だと思います。

 

いやーーー、読書って素晴らしいですね。

 

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