はじめの一行
はじめに
脳の不思議と魅力。
脳の偉大なるパワーと可能性。
脳にはまだまだ未知のものが数多く眠っている。それは可能性の宝箱であり、知れば知るほど、その魅惑的な世界はますます広がっていく。
脳を知ることは自身を含めた人間理解を深め、生きていくうえでの英知になるはずである。
とはいえ、脳だけを見ていても十分に人間理解ができるとは言えない。当然のことながら、人間は脳だけで存在しているわけではないからだ。
ちょっとポエムチックなまえがき。
前書きでは、どちらかというとネガティブな問題をあぶりだすところから始まることが多いのですが、本書の場合、脳への畏敬の念というか、そういった著者の思いから始まっています。これはこれで、内容というか、のウソのものへの期待感が募るまえがきだな、と感じました。
本書の内容
脳を見る
じつは本書に書かれている内容の多くは、すでに心理学の分野では知られた知見がそこそこあるようにも思えます。心理学というのは、脳その物を見るわけではなく、脳が興した反応を通じて起こした行動を見るわけですが、本書は実際に脳の中で何が起こっているかを紐解きながら、脳の活用法を考察していく一冊です。
テーマは、モチベーション、ストレス、そしてクリエイティビティについてです。
読むとわかるのですが、心理学で得た知見というのは、こういった神経学的に見ても正しいことがけっこう多いことがよくわかります。
最近の本の多くは、「科学的に正しい」とか「脳科学的に見ると」的な内容の物だったりもするのですが、語っている人がその筋の専門家でないことがけっこう多い。そういった表現はどちらかというと自己啓発書に多く見かけますが、脳科学や神経科学を専門的に研究している自己啓発書はあまり見かけません。有名どころでは茂木さんあたりでしょうか。で、本書はまさにその神経科学の専門家の書いた本ですからなかなかに価値ある一冊と言えそうです。
根拠のない自信の育み方
ところで、私は常々、根拠のない自信というのは結構大事だな、と思っていました。
ある意味最強じゃないですか(笑)
で、本書においては、その根拠のない自信の育み方も触れられます。
普通人は、過去の経験から、できたことに対して自信を持つわけです。
しかし新しい事や未開拓の領域には先例がないわけです。だから結果を予測し、チャレンジするモチベーションにはつながりにくい。
そこで大事なのは、「挑戦の記憶」と「得たものの記憶」を同時に脳で再現するという事のようです。
何か新しいことをやった経験について、そこに飛び込んだ記憶とそこから得た記憶を同時に思い起こし、何かをやれば何か価値ある経験が出来るという脳の回路を作るという事が大事だといいます。
もう一つ関連して強調されているのは、結果ドリブンではなく、プロセスから学ぶという事。
私たちはともすれば、努力と結果だけを見がちですが、実際のところはそこに至るまでの試行錯誤があるわけです。その試行錯誤はまさに小さな失敗と成功の積み重ね。この過程を意識することで、ストレスを力に変えることが可能になります。案外、ゲーミフィケーションというのはそういったところへ意識を向かわせる工夫の一つと言えるかもしれません。
・・・ということでたった一つのトピックだけでも結構面白い。
そして本書のはじめの方で、著者は言います。
誰にでもできる再現性のある方法というのはなくって、一定の方向感は本書で示すとしても、そこからの試行錯誤というのが脳の学習プロセスにおいては重要なのだといいます。
その過程を経ずに学んだことは、残念ながら脳に定着しにくいといいます。
バカチョンでできることなどない、という事なのかもしれませんね。
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