はじめの一行
どちがホンモノ?2枚の「大政奉還絵図」
慶応三年1867 大政奉還……幕末の一八六七年十月十四日、徳川慶喜が政権を調停に返上する。
徳川家の将軍が天皇に政権を返すって、いったいどういうこと?
将軍と天皇の関係は?関口:江戸から明治への大きな転換点と言えば、「大政奉還」です。幕府最後の将軍、徳川慶喜が調停に政権を返しました。
本書はまえがきもなくいきなりの本文でした。
全体の構成として、セクションごとに一つの事件を取り上げ、対談形式で話が進んでいくので、ぶつ切り(と言ってももちろん全体での流れはありますが)の構成の中で、あえてまえがきはいらないとの判断だったのかもしれません。その代わりと言っては何ですが、一番初めの話題は多くの人が教科書で知る大政奉還の絵は実はけっこう脚色があるらしい、というなかなかにキャッチーなテーマを取り上げています。
本書の内容
歴史のなかでも身近な話題を
たぶん、明治期の歴史というのはある一面においては語りつくされている部分もあるわけですが、一方で、学校で習った近代史って実は意外と駆け足で奥深さがなかったように思います。
なんとなく起こった事柄、それも新聞で言うならトップ記事だけを追ったのが歴史の事業とすれば、本書はもう少し大衆というか、歴史の授業ではあまり触れられないところに切り込みます。
たとえば、徳川慶喜は名前は知っているし、何をやった人かは何となく知っていても、その人柄を知る機会はあまりないように思います。
本書のなかではそんなものが垣間見えたりします。
明治維新で騒然となる日本という印象がある時期においても、じゃあ一般の町民はどうしているのか。
考えてみれば、第二次世界大戦の時代とは違い、武器は刀なわけで、江戸を中心とした地域と距離を置いた場所に住む人にとっては、なんのこっちゃってこともあるでしょう。
そんな普通の人々の暮らしぶりなんかも取り上げられています。
歴史というとどうしても何かの圧力で美化されていたり偏って伝わることも多いと思うのですが、丁寧に資料を紐解いたっぽいかんじで比較的事実に近いところの考察がなされているのではないでしょうか。
そんな話を対談形式で、一つ一つの事象を完結する形で書かれているため、比較的気軽に隙間時間に読むことができます。
意外な事実を知れたり、ということもありますし、今のコロナ禍の社会ってどこか明治維新の時期の社会の変化と似てる部分があるんじゃないかと私は勝手に思っていて、これからを考える参考にもしたいなぁと思って本書を手に取りました。
元々あまり歴史の本が好きでない私も、リラックスして楽しめた一冊です。
いやーーー、読書って素晴らしいですね。
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