目次
はじめの一行
はじめに
星野リゾートは旅館・ホテルの運営会社である。長野県軽井沢町で創業し、4代目の経営者である星野佳路社長は、顧客満足度アップと収益力向上の両立を掲げ、会社を成長させてきた。この10年間で、軽井沢の老舗企業から、全国でリゾート施設を運営する企業へと変身を遂げた。日本各地でリゾートの運営を引き受け、業績を向上させていると同時に、軽井沢や京都では高級旅館「星のや」の展開を進めている。
本書の研究の対象である、星野佳路氏と経営する会社に関する説明から入るというオーソドックスな一行目だと感じました。
本書の内容
少し古めのビジネス書が教科書
本書の内容を簡単にご紹介すると、こんな感じだと思います。
星野リゾートでは、何か課題が持ち上がると、教科書となるべきビジネス書を探します。そのビジネス書は、新刊というより本屋の片隅で1冊だけ置いてあるような、けっこう長く売れ続けている本。そして、しっかりしたエビデンスが提示されているものであって、個人の経験値だけで書かれたものではないもの。
これを購入し、何度も何度も読み返し、実際の課題解決に役立てていく。そして、暗礁に乗り上げるたび教科書に立ち返り、ステップを見直す。
星野リゾートと言えば、けっこう大胆な経営戦略を持っていたり、かなり常識はずれなことをやっている印象がありますが、本書によるとそういった行動も、教科書道理なんだそうです。
一説によると、「ほとんどのビジネス書は使い物にならない」という人もいますが、このような成功事例を耳にすると、やっぱり使えるもんなんだなぁとちょっと感動してしまいました。
圧巻は「おいしさ保証」
本書の中で紹介されている事例で私が最も印象深かったのが、スキー場施設の食堂におけるカレーの「おいしさ保証」です。
こういったスキー場などの食堂の飯はまずいというのが一般的なパターンだと思いますが、星野さんがかかわったスキー場は一つ大きな強みとして「おいしいカレー」を打ち出すことにしたそうです。
それだけだとインパクトが低いので、おいしさ保証を付け、美味しくなければ理由の如何を問わず返金します、ということを打ち出したそうです。
実はこの「〇〇保証」による返金システムって、今やいたるところのマーケティングで使われています。
これらの返金率が決して高くないことは、すでに証明されています。
ただ、現場の社員にとってはやっぱり毎日がビクビクです。
で、そういったサービスを始めて、3日目に初めての返金希望客が出ました。
返金に応じるとともに、その理由を聞いてみました。
すると、ご飯がベタベタしていておいしくない、と。
面白いのはココからです。
それまでなかなかやる気が出なかった社員が、だんだんと奮起し始めたのです。
炊飯器を伸長するとか、辛さ調整をするようにするとか、次々と工夫をし、お客様の満足度を自主的に上げるような工夫をするようになったとか。
お客様による評価に、人はあらがえないのかもしれません。
事例と教科書
このように本書は、実際の星野リゾートでの実践事例と、教科書として選出された本の紹介、そしてそれに近い試みをやった企業などをワンセットで紹介してくれています。
もう10年前の本ですが、いまでもパラパラ売れているようです。
まさに本書が、どこかの会社の教科書になる、なんていうこともあるのかもしれませんね。
いやーーー、読書って素晴らしいですね。
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