小説

ムゲンのi(上)




はじめの一行

プロローグ

やけに重い瞼を持ち上げると、天井が見えた。
白い、吸い込まれてしまいそうなほどに真っ白な天井。
「ここは……?」
唇の隙間から零れた声は、自分のものとは思えないほど掠れていた。口が、そして喉がからからに乾燥している。乾いた砂を飲み込んでしまったかのように。
霞がかかって思考がまとまらない頭を振って起き上がろうとすると、まるで全身の関節が錆びついているように軋み、痛みが走った。

ムゲンのi(上)(知念実希人)

謎に包まれたオープニング。
主人公らしき人が、自分がどこで何をしているかもわからない風の始まり方というのは、読み手も引き込まれてしまいますね。
内容も始まり方に負けず劣らず予測不可能な展開をしていきます。

本書の内容

奇病と不思議な儀式

本書は、人気作家知念実希人さんの代表作といえるかもしれません。これ以降、ネタバレしないようには気を使って書きますが、ネタバレでがっかり、とならないようにそれを許せる方だけ読んでください。

ざっくりとした設定はこんな感じ。
主人公は女医さん。彼女が担当する患者に、イレスという奇病の患者がいます。これは世界でも数えるほどの数しかないにもかかわらず、今自分の勤める病院には(たしか)4人の患者がいる。

そのイレスという病気は、ある時突然に患者は眠りに入ったまま起きてこない。高速眼球運動が見られるので、夢を見ているようなのですが、とにかく起きてこないので実際のところは何が起こっているかがわからない。

で、ひょんなことから主人公は祖母の勧めもあり、女医はある儀式を患者に施すことを決意します。その儀式を行うに際して、女医は患者の夢の中に入るのですが、その中でまったくつながりがないと思われていたイレス患者たちに一定のつながりがあることが見え始めます。

さて、全体としてはそんな物語が展開する中で、一人一人の患者に割と複雑なドラマがあります。女医は、それぞれの患者の閉じ込められ、弱められた魂を救い出すため、患者の夢の中を行き来しますが、そこで明らかになる患者が体験したショッキングな経験。ここに従来からのサスペンス的要素が取り込まれていて、どんどん話が大きく膨らんでいきます。

当初はファンタジー小説かと思ったが…

ということで、私的には知念さんの本といえば、そこそこライトタッチで、そこそこリアリティもあって、そこそこ現実離れしている絶妙な位置取りをされてるイメージがありました。しかし、本作の子の上巻の半分辺りまで読む中で、内容はかなりファンタジーな路線に振ってるなぁという印象がありました。しかし、後半に至ると、患者がイレスという病気で伏せる前の事実が書かれており、その記述を見ると、ファンタジーとは言えないかも、という違う思いが強くなります。

とくに後半の裁判シーンは結構な迫力で、個人的にはこの部分を克明に描かれていることでとても本書に深みが出ているんじゃないかと思います。単なるファンタジーだと読めない人も、そういったリアルな法廷シーンの描写などで引き込まれる可能性はあると思います。

ファンタジーとリアリティ、この両方を追求すると大抵批判的な意見も多くなりそうなのですが、それが広く受け入れられているということはかなりいいバランスなのかもしれません。
ここまで広がった話が、下巻でどう帰結するか。楽しみです。

いやーーー、読書って素晴らしいですね。

 

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ムゲンのi(上)

 

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