ビジネス書

「顧客消滅」時代のマーケティング ファンから始まる「売れるしくみ」の作り方

はじめの一行

序ーーー2020年4月、顧客が消えた

「生まれて初めて、人が歩いていない伊豆を見ました」
伊豆一円に和菓子店を展開する、「石舟庵」社長・高木康行氏は言った。
伊豆で生まれ育った彼をして始めて見る光景―――それは、人が消えた社会だった。

「先の予約がすべてなくなる、という事態に陥りました」
そう語ったのは、名古屋のレストラン「ことわりをはかるみせ ばんどう」のオーナーシェフ・坂東俊氏だった。彼の店からもまた、人が消えた。

「顧客消滅」時代のマーケティング ファンから始まる「売れるしくみ」の作り方(小阪裕司)

本書の著者である小阪裕司さんは、とても映画好き。そして、エンターテイメントへの造詣が深い方というイメージが強い人です。ですから、こんなビジネス書も、どことなくドラマティックに始まります。この冒頭というのはたぶん、すごく自分の中にあるイメージがあってそれを表現されたんじゃないかと思います。日常と違うことが起こっていることを以下に伝えるか?ということを考えた結果、人が歩いていない伊豆、というシーンを選ばれたんだと思います。このまえがきを読んで、ドキドキしている自分を見つけました。

本書の内容

少しだけストーリーをつまんでみると・・・

寂しいシーンから始まる本書ですが、かなり早いタイミングでそのシーンは一変します。私はその様子を見てなぜか涙ぐんでしまったくらいです。別に過剰な表現があったわけではないのですが、たとえば山の中にあるスーパーには、まるでディズニーランドに行くかのような笑顔のお客さんが押し寄せてきますし、一時期売り上げがガタガタになりかけたお店も一気に業績を回復し、むしろ平常時を上回る売り上げを記録します。いったいそういった店に何が起こっているのか。そのメカニズムを解説するのが本書、と言えるかもしれません。

消費の変化

著者は以前から、「モノ」の消費と「心を満たす」消費を分けて考えることを進めていました。そして、このコロナ禍に置いて何が起こったかというと、「モノ」の消費も実は一定程度増えている部分さえあるといいます。何しろ生活必需品は買わないわけにはいきません。そして巣籠需要もあって、全体としては消費量が増える。一方、心を満たす消費も、けっこう増えたといいます。もちろん一時的な停滞はあったものの、だれもがはじめの緊急事態宣言明けには、楽しみのためにお金を使おうとした。しかし、唯一苦しい思いをしたのが、「中途半端な」位置にあるもの。たとえば、普段ならなんとなく流れで買っていたものとか、特段強い欲求があるわけではないけどついでとかに買っていたもの。そんなものの消費が減ったといいます。著者は洋服の購入を例に説明していました。自分はいつもはリアル店舗で服を買うのだけど、外出できないのだから仕方がなくZOZO TOWNを利用したといいます。そうするととても便利。もうこれはやめられないわけです。ということで、今まで通っていた福屋さんのいくつかは自分の意識の中から消えていったといいます。きっと相変わらずリアル店舗に通いたくなる店はあるのでしょうが、そうでない店はもう行かなくなるのです。

そして中小企業が目指すならどっちかというと、「モノ」分野では利便性や安さが大事で、これは大手企業にぶがあります。一方、「心を満たす」という意味では小さなお店でもいくらでもやりようがある。それが著者の主張です。

これからのマーケティング

具体的な実践内容については、なによりもまずは顧客リスト。小売店であるならもちろんですが、BtoBビジネスにおいてはエンドユーザーを意識することを進めています。なぜかというと、こう言った非常事態に「打つ手」があるとしたら、顧客との直接コミュニケーションが最も効果が高いからです。そして顧客リストは単に買ってくれた人のリストとして放置するのではなく、そのリストを温める必要があります。何の関係性もないところにうらんがなのDMを送り付けるのではなく、まずは仲良くなることが大事です。その手段としては、ニューズレターの発行であったり、イベントの開催であったりというものが代表的です。そこに自己開示を行ったり、場づくりを行ったり、もてなしを行うことで絆を作る。そうすると売り上げは次第に作りやすい環境が出来上がってきます。

そういった流れの中で、ファンダムを創り出し、顧客と共創するというのが理想的なビジネスではないかと本書は提案します。
とてもワクワクしたないようで、実は私も一部実践しており、多少効果は感じるところがあります。もしよかったら参考にしてみてはいかがでしょうか。

いやーーー、読書って素晴らしいですね。

読書ノートをマインドマップにしてみました。

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