ビジネス書

両利きの経営―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く

はじめの一行

はじめに

本書は、約二〇年にわたって私たちを虜にしてきたミステリーを解こうと試みたものだ。
私たちは研究者として、また時にはコンサルタントとして、かなり多くの組織やマネジャー、リーダーたちと交流する機会に恵まれた。こうした組織はたいてい戦略的なビジョンを掲げ、巨大な金融資本を持ち、賢くて勤勉な人財を大勢揃えている。ところが、長期にわたって追い続けていくと、こうした企業はイノベーションや変化に直面した時に、なぜか苦戦しがちなのだ。

両利きの経営―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く(チャールズ・A・オライリー, マイケル・L・タッシュマン)

私たちを虜にしてきたミステリーを解く。
なかなか刺激的な一行目ですね。比較的重厚なビジネス書なのに、煽情的なはじまりです。そして、なぜか前向きで堅牢に見える組織が時代の変化のなかでは苦戦するという話を持ってきます。ああ、硬直化した大企業の話かな、と想像する人も多いと思います。一方本書のテーマが両利き。ここがどうつながっていくのか、期待感が膨らみます。

本書の内容

「両利きの経営」とは?

この両利きの経営というのはどういった物なのでしょうか。私ははじめこの言葉を聞いたとき、論語と算盤の渋沢栄一氏を思い浮かべました。ビジネスとしての推進力と、倫理を追い求める、というのが両利きの経営なのかな、というのが第一印象でしたが、実際は違いました。

Amazonの本書の紹介欄にはこんな風にありました。

両利きの経営」とは?
知の探索……自身・自社の既存の認知の範囲を超えて、遠くに認知を広げていこうとする行為

知の深化……自身・自社の持つ一定分野の知を継続して深掘りし、磨き込んでいく行為

本書のなかでは、「探索」と「深化」という言葉が繰り返し出てきます。
非常にわかりやすい説明をするならば、「深化」というのは今のビジネスをもっと磨いていくという行為。そして、「探索」というのは、新たな事業分野を求め、大きな視野を持って試行錯誤する事。本書のテーマは、企業が長く反映するために必要な経営手段として、この二つを同時に動かそうということになります。

「両利きの経営」を可能にするリーダーシップ

本書では「探索」と「深化」を同時進行で成功させた企業の事例がふんだんにありますが、そう言った組織を動かすリーダーシップについてが私の一番の関心どころ。どうすればそういった両利きの経営ができるのか、ということです。じつは本書では、その回答をそこそこのページを割いて提示しています。ここでは簡単に、両利きの経営を行うにあたって必要と思われる、五つのリーダーシップ原則を項目だけご紹介します。

①心に訴えかける戦略的抱負を示して、幹部チームを巻き込む。
②どこに探索と深化との緊張関係を持たせるかを明確に選定する。
③幹部チーム間の対立に向き合い、葛藤から学び、事業間のバランスを図る。
④「一貫して矛盾する」リーダーシップ行動を実践する。
⑤探索事業や深化事業についての議論や意思決定の実践に時間を割く。

なるほど、探索と深化という進む方向がまったく違うプロジェクトですから、リーダーはその違いをしっかり理解していく必要がありそうです。
なにしろ、探索は当面はあまりお金を産まないし、ハッキリ言って失敗のほうが多いと言えるでしょう。それに対して、深化のチームは安定的に利益を生み出しその利益が探索に使われるわけです。このチーム間の対立、そしてチームごとに対するリーダーシップの矛盾という様々な困難を乗り越える必要がありそうです。そういう意味では、優秀なリーダーが育たなければ、両利きの経営というのは難しいのかもしれません。これを中小企業が実現しようとするなら、多くの場合は一手に経営者にその責任が肩に乗る事でしょう。そういった一種の苦痛に耐えてもそこへ進むという確固たる意志がなければ成し遂げられない可能性は高そうです。

葛藤を乗り越えて初めて、未来への光を手にすることができるのかもしれません。

 

いやーーー、読書って素晴らしいですね。

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