小説

フリーター、家を買う。

はじめの一行

1 フリーター、立つ。

いつからこんな状態に滑り落ちたのか、武誠治ははっきりと覚えていない。
そこそこの高校へ行って、一浪したがそこそこの私大へ行って、そこそこの会社へ就職し、その会社で自己啓発だか何かの宗教の修行だかという感じの新人研修に突っ込まれた。
竹刀を持った「指導者」が白い鉢巻を巻いて口に出すのも恥ずかしい人生訓をがなり、新人も復唱し、声が小さかったり姿勢が悪かったり、とにかく少しでも「指導者」の目につくことがあると竹刀でぶっ飛ばされる。しかも泣きながらだ。

フリーター、家を買う。(有川浩)

実は程度の差こそあれ、自分の人生に対してこの書き出しの主人公のような感想をもっている人は多いような気がします。
学生時代はそこそこ立ち居振る舞いも上手くやってきたのだけど、社会に出てきてからはけっこう苦労しているというパターン。
まあそれだけ、社会という海が厳しいという事もあるのでしょうが、従来の生き方から少し成長しなければならないタイミングが誰しも訪れるという事なのかもしれません。

本書の内容

お仕事小説的展開

この「フリーター、家を買う。」は以前、ドラマ化されていたかと記憶します。
当時すでに私はテレビをほとんど見ない生活をしていたので、そのドラマは見たことがなかったのですが、タイトルから受ける印象は「家を買いたい主人公が、家選びに伴うドタバタ劇を繰り広げる」的内容だと想像していました。しかも、フリーターですからローンの審査は相当厳しそうだし。

しかし読み始めて感じたのはどちらかと言えばお仕事小説的な内容と言ったほうが近いかと思います。
あらすじはシンプルで、母と父と主人公の誠治が暮らす家は、父の社宅扱いになっていて非常に安くで借りることができている。しかし、そこに長い間住んでいるなかで父のある地域のコミュニティの行事での失態から、母がいじめを受けるようになる。そういったことを長年繰り返す中で、精神を病んだ母を救うには住む環境を変える必要がある。そんなきっかけから、ダメダメのフリーターだった誠治が一念発起をして家を買おうという決心をするという内容。

その過程で、フリーターだった誠治が社会の洗礼を受けたり、父との確執に向き合ったり、姉の強力なリーダーシップがあり、色々なストーリーが展開されていきます。

主人公の葛藤

見どころは、主人公の心の葛藤……と言いたいところですが、お仕事小説的と勝手に評している私ですから、主人公の仕事ぶりについてでしょうか。
たまたまアルバイトで世話になった建設会社での働きぶりが、色々と「おお、やっとるやっとる」という感じでニヤニヤしてしまいます。決して行動なビジネススキルを発揮するわけではありませんが、基本に忠実に会社の中の効率化を行っていく誠治とそれをサポートしてくれる上司、そして変に打ち解けた作業員のおっちゃんたちとの交流が個人的には結構好きです。

最後の終わり方は個人的にはちょっと拍子抜けっぽい印象があったのですが、Amazonのレビューでそれを指摘される方はあまりいらっしゃらなかったようですので、私の個人的な好みの問題かもしれません。

全体を通して、読みやすく、気楽に楽しめる一冊。

いやーーー、読書って素晴らしいですね。

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