はじめの1行
鮮烈な始まり
今回も湊かなえさんの作品。
こちらもドラマ化されて、ヒットしたことがよくわかる作品です。
その始まりはこんな感じ。
『深瀬和久は人殺しだ』
いきなり突き付けられた息の根を瞬時に止めてしまいそうな言葉を、どうにか受け止めることができたのは、今日一日の流れがここに収束するのではないかという予感が、胸の片隅に無意識のうちに芽生えていたからかもしれない。*
フロントガラスに雨粒が落ちた。一滴、二滴、と薄茶色の一円玉大のしみができるのを見て、透明だと思っていたガラスに、実は薄く土ぼこりがたまっていたことに、深瀬和久は気が付いた。続いて数滴、同じ模様が描かれたが、ワイパーを動かすにはまだ少し早い。おそらく、それまでに目的地へ到着するはずだ。
いきなり「人殺し」と指摘される、主人公深瀬。
このあと、深瀬の人殺しとは程遠いイメージが徐々に明らかにされていきます。
実は、このシーンは物語の中盤に出る話です。
物語のクライマックスや転換点にあるエピソードを冒頭にもってきて、インパクトを与える。
割とよく見かける小説の表現技法ですが、実は私も多用します(笑)
グイグイ引き込まれていきます。
本書の内容
あるレギュレーションに則った内容
実は、この物語は、あるお題というか、レギュレーションが与えられて書かれたものなのだそうです。
そのレギュレーションについて説明すると、ネタバレに近い話になってくるのでここでは触れませんが、そういった制約の中でここまで物語を描き切るというのはすごいな、と感心しています。
そのレギュレーションについて知りたければ、単行本の最後の解説に書かれています。
ただ、それをはじめに見てしまうと、物語の面白さは半減してしまうのでご注意を。
さて、私は見ていませんが、本作品はドラマ化されたようですね。
私は見ていませんが、ドラマを見て、ドラマで表現しきれなかった微妙なニュアンスを詳説で確認する、というのもなかなか面白い作業かとは思います。
あらすじ
こういった小説のあらすじ、どこまで紹介するかは難しいところ。
主人公深瀬は、割と地味な男です。
こういうキャラクター、基本的にはわき役キャラですが、本書では主人公です。
クラスでも目立たないタイプで、あまり友人からのお誘いもない。
逆に誘われたとしても、自分がそこにいていいのだろうか?という罪悪感を感じるタイプ。
言ってみれば、自己評価が非常に低いタイプの人間です。
彼が、まだ学生時代、あるグループで友人の別荘に泊まりに行くことになりました。
その時にある事故がおこります。
少し謎めいた事故の記憶は、そのグループの人間の記憶から少しずつ消えかけていた時、「人殺し」といったメッセージがそのグループの人間に届きます。
ここから物語は一気に動き出す。
そんな感じです。
これは湊かなえさんの作風なのか、どことなくどんよりとした暗さが漂う本作。
けっこう楽しく読むことができました。
りなみに、リバースというタイトル、ゲロの事ではありません。
念のため。
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