ノンフィクション

目の見えない人は世界をどう見ているのか

はじめの一行

まえがき

人が得る情報の八割から九割は視覚に由来すると言われています。小皿に醤油を差すにも、文字盤の数字を確認するにも、まっすぐ道を歩くにも、流れる雲の動きを追うにも、私たちは眼を使っています。
しかし、これは裏を返せば目に依存しすぎているともいえます。そして、私たちはついつい目でとらえた世界がすべてだと思い込んでしまいます。本当は、耳でとらえた世界や、手でとらえた世界もあっていいはずです。

目の見えない人は世界をどう見ているのか(伊藤亜紗)

著者による、私たち芽が見える人に対するアンチテーゼというわけでもないのでしょうが、ちょっとした提案が一発目に出てきます。
本書はそういった著者の考え方を検証市営くないよう、と言えるかもしれません。

本書の内容

「目」以外の器官で「見る」

冒頭で会った通り、私たちは、目を通してみるという事になれています。
その状態で例えば、富士山を眺めたとします。実はこれ、富士山を二次元でとらえることになります。
もちろん、立体感は感じてるとはいえ、目に入る情報はあくまで二次元。絵に描ける状態で情報が入ってきます。

じゃあ目の見えない人は、どのように富士山をとらえるのでしょうか。
実は彼らは、たとえば足で歩いた感覚(傾斜など)や、感じた重力や、音やにおいを総合的に判断することになります。
つまり、目で見るほどに広範囲には知覚できないものの、自分が実際に感じることができる部分についてはかなり詳細な情報を意識していると言います。
身体で感じた立体として富士山を認識するのだそうです。

そんな話を聞くと、私たちは眼が見えるがゆえに、実は大事なことを見落としていることもあるのかもしれません。
眼が見えることで分かったつもりになっているけど、実は逆にまったく世界のことが分かっていないのかもしれません。

目が見えないことは可哀そう?

実は私たちは、眼が見えることで他の感覚を失っているのではないでしょうか。
つまり、世界を知覚するためにたくさんの刺激を受け取っているはずなのに、それを無視している、ってことはないでしょうか。
眼が見えない人たちは、眼が見えないからこそ見えるもの、見えないからこそ出会う世界がそこにあるんじゃないかと思います。

そう考えていくと、眼が見えないという事は、無理にポジティブに考えるなんて言うことをしなくても、ひとつの個性として受け止めることができるのかもしれません。
集団で暮らしていると、ある能力の長けた人がいたなら、違う能力にたけた人がいると集団全体としては強みになる。
眼が見える人と見えない人は、単なる弱者とそうでない人という区分ではなく、お互いが社会の中で補い合って生きていくものなのかもしれない、なんてことを感じました。

いやーーー、読書って素晴らしいですね。

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