はじめの一行
第一期 目的なき船出
書楽
横浜のとある駅から歩いて五分。駅を行き交う人々の喧騒から離れた、人通りの少ない道沿いに『書楽』はある。僕はここの常連の一人だ。
一見普通の喫茶店なのだが、提供してるものがコーヒーだけでなく、書斎である空間であることと、一人でしか利用できないところが普通の喫茶店との大きな違いだ。
高校を卒業して初めて横浜に出てきた僕は、結婚して東京で暮らしている姉が事前に契約しておいてくれたワンルームマンションに住むことになった。
奇をてらうことなく淡々と始まる書き出し。
そして、謎の言葉「書楽」という文字があり、その説明に写る。
状況説明をサラッと進める内容ではありますが、全体を通してどこか落ち着いた文体ですすめられているのが本書の印象です。
本書の内容
若者の人生
本書の主人公は、就職活動に出遅れた新卒生。
たくさんの会社訪問はするものの、あまりいい感触を得ることなく悶々とした日々を過ごす。
そんななか、「手紙屋」の噂を耳にすることになる。
ちょっとでもいい条件で就職したいと思う一方、就職活動はうまくいかない。
そんな思いを、手紙屋との10通の手紙のやりとりで、徐々に考え方が変わり、自らの生き方を取り戻していく様を描いた小説。
主人公を通じて、自己啓発的な内容を学んでいくというスタイルで、基本的には自己啓発書と言っても差し支えない内容だと思います。
そもそも、私たちは、長期にわたって務めるであろう就職先を、どう考えているでしょうか。
短絡的に、ブランドであるとか、条件であるとか、勤務地であるとか、そんな事で考えているケースは多い。
実際のところ、就職人気企業ランキングを見てると、短期的な業績なんかを参考にしている人も多い。
しかし、実際に働き出せば、10年どころか30年近く勤めることも多い中で、果たしてそれで間違いない就職先選びができるのでしょうか。
そんな事を主人公は手紙屋とのやり取りの中で学び、自分なりの生き方を模索していく。
そして最後に明かされる手紙屋の正体とは。
なかなか楽しい一冊です。
いやーーー、読書って素晴らしいですね。
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