目次
はじめの一行
「君にも、見えているんだろ」
「君にも、見えてるんだろ」
蒼井秀明が声をかけると、彼はゆっくりと振り返った。
夕闇迫る、墓地の一角だった。
彼の細められた目が、まっすぐに秀明に向けられる。その目は暗く、まるで哀しみを湛えているようだった。
彼とは高校三年で同じクラスになった。一年近くも同じ教室にいながら、こうやって声をかけるのは初めての事だった。
今まで、何度もそうしようと思った。だが、できなかった。他人を寄せ付けない空気があったからだ。
唐突に出てくる、蒼井秀明なる人物。
実は、主人公八雲の高校時代の友人。
いきなりそんな重要人物が出てくる一行目。
なんとなく、神永さんらしいと言えばらしいのかもしれません。
このシリーズは大体、本編との時系列とは少し違ったシーンからスタートしますが、これもその流れを踏襲しているようです。
ちょっとしたおどろきをはじめに用意して、仕切り直しをして物語をスタートさせるというスタイルは、シリーズ全体の共通点かもしれません。
本書の内容
八雲の高校時代
本書の見どころの一つは、冒頭の秀明なる登場人物とのやり取りの中で、高校時代の八雲が垣間見れる部分かも知れません。
今の八雲は高校時代どんな風だったのかが、彼の目を通して語られます。
また、実はその秀明というのが物語の中で重要な役割を果たしています。
秀明の複雑な家庭環境が明かされるのは随分後ですが、物語の重要なカギを握っています。
そのほかには、ちょっとしたロマンスも…笑
どこで何が起こるかは、ネタバレになりそうなのでこれ以上は語らないようにします。
また、それぞれの登場人物にピンチがおとずれます。なかなかこのピンチが巻を追うごとに大変になってくる(;´∀`)
より強い刺激が必要なんでしょうね。
脳内映像化?
このシリーズでよく言われるのは、小説なのに頭の中に映像が浮かぶかのような書きぶりである、という事。
どうやらこれは、登場人物の心の声を全て文字に起こしてるからかもしれません。
登場人物の感情が文字化されているのです。
ここは多分、好き嫌いがわかれるところ。
登場人物の心境は想像しながら読みたいという人は一定数いらっしゃるんじゃないかと思います。
すべてを描かれると興ざめする人もあると思います。
逆にいちいちそんなことを考えるのではなく、とにかく指定された状況を楽しみたいという人にはいいかもしれません。
私はそのことに気づいてからは、ちょっとくどく感じてしまいました。
まあここはお好みで、ってことですね。
いやーーー、読書って素晴らしいですね。
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