古賀史健

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え




はじめの一行

物語風の始まり

本書は、哲人と青年の対話形式で話が始まります。
そもそも、本書のタイトル「嫌われる勇気」というのはなかなか秀逸なのではないかと思いました。
意外性、そして社会の空気感からすると、もうタイトルだけで売れてもおかしくないような気がします。
また、本書の始まりは、なんとなく期待感を掘り起こすいい雰囲気を醸しています。

かつて1000年の都と謳われた都市のはずれに、世界はどこまでもシンプルであり、人は今日からでも幸せになれる、と説く哲学者が住んでいた。納得のいかない青年は、哲学者のもとを訪ね、その真意を問いただそうとしていた。悩み多き彼の目には、世界は矛盾に満ちた混沌としか映らず、ましてや幸福などありえなかった。

青年 では改めて質問します。世界はどこまでもシンプルである、というのが先生のご持論なのですね?
哲人 ええ。世界は信じがたいほどシンプルなところですし、人生もまた同じです。
青年 理想論としてではなく、現実の話として、そう主張されているのですか?つまり、わたしやあなたの人生にわたる諸問題もまた、シンプルなものであると。
哲人 もちろんです。
青年 いいでしょう。議論に移る前に、今回の訪問についてお話させてください。まず、私がここを訪れた第一の理由は、先生と存分に、納得のゆくまで議論を交わすことです。そして、できうることなら先生にご持論を撤回していただきたいと思っています。
哲人 ふふふ。
青年 というのも、風の噂に先生の評判を聞きましてね。なんでもこの地に一風変わった哲学者が住んでいて、看過しがたい理想論を唱えているらしい。曰く、人は変われる、世界はシンプルである、誰もが幸福になれる、だのと。私にとっては、いずれも到底受け入れられない議論です。

嫌われる勇気(岸見一郎、古賀史健)

本書の内容

現代のスピリチュアルに似ている?

実はこの本、読んだのは発売当初。
なので、あまり詳しく内容は覚えていません。
ごめんなさい。
最も印象に残っているのは、人の悩みはすべて人とのかかわりにおけるもの、ということ。

私の印象ですが、人は他人からの評価を意識的・無意識的に気にする。
その結果、非常に窮屈になり、本来の自分を発揮できなくなっている。
その中で、植え付けられた常識感や、世界観の中で生きるのではなく、本当の自分を発揮することで幸せになれる。
そんな風に言っていたような気がします。
嫌われる勇気というタイトルは、対人関係にびくびくせず、自分自身をオープンに発揮して、人の目を気にせず生きていこう
的主張とつながっていたように思います。

ちょうど私自身も、そんな思いの中でもがいていた時期だったので、結構響いた一冊です。

あとはイマ、ココ的ニュアンスもあったのかな。
未来や過去の悩みにとらわれていても意味がないですよ、的な。
(ここは記憶が定かではありません。ごめんなさい。)

窮屈な社会や人間関係の中で生きている現代人の生活環境を見ていると、売れる理由がよくわかります。

悟りへの道?

ここからは初見からずいぶん経っての再読についての感想を述べたいと思います。2022年1月24日の追記です。

冒頭で記した通り、本書は哲人と青年の対話として話が進んでいます。
本書においては一般的な人がアドラー心理学に対して感じるであろう疑問を、青年の口を借りて疑問・反論をあらわにすることで読者に理解を深めてもらおうという趣旨だと思います。
初めて読んだときにはあまり感じなかったのですが、なんだか今回はこの青年のしつこさというか、やたらと反抗的な態度がけっこう目についたような気がします。
なぜかと考えてみたら、もしかしたら私は哲人の考えが正しい、と哲人の視点で呼んでいたのかもしれません。
以前は逆に成年の視点だったのに。
この視点の転換は、自身にとって成長と言えるかもしれませんし、逆に自分の推す考えと違うものを排除しようとする心の狭さと言えるかもしれません。
そういった部分からも、自分の心の在り方が推察できそうです。

本書の前半は、「目的論」と「原因論」についての話が出てきます。
原因論というのは、何か困ったことが起った時、そこには何かしらの原因があるからそういう状態になっている、という考え方。
逆にアドラーがとる目的論というのは、何かしらの目的があるから、今の状況を自ら作り出しているという考え方をとります。
例えば、ひきこもっている人がいたとき、それは何か原因があってひきこもるというより、そもそもひきこもって人とのコミュニケーションや社会への露出を避けたいという目的があって、結果としてひきこもりという行動をとっていると考えます。
もちろん、本人はひきこもっている自分に対する劣等感から、かなり苦しい思いをしていると思われます。
しかしそれでもなお、ひきこもるメリットを感じてるからひきこもり続けているのだ、と。
この入り口の話ですでに、「そんなことはない!」と受け入れがたいという人は多いと思いますが、そこを理解できるように非常にたくさんのページを割いています。

たとえば人は、「変わりたいけど変われない」というシーンがよくあります。
しかしそれは、変わりたいともがいているというより、変わらないメリットがあるから変わらない選択をしているのだ、と言います。もちろん本人はそのことに気付かないのですが。
実際のところ、今の状況を抜け出すには行動を変える必要がありますが、まったく何も行動しようとしない人は多い。
口では変わりたいと言いながら、変わるための行動を一切していない人のなんと多いことか。

そういった話が一通り済んだ後は、「すべての悩みは対人関係の悩み」であるという事を論じます。
人と比べて感じる劣等感を中心とした、私たちがいかに自分の本当の望みではなく、人との比較で生きているかが論じられています。
そして、周囲の比較の中で生きる人は、他人の期待、他人からの評価を満たすために生きることです。
これを他人に求められている人生を生きるとでもいうのでしょうか。
承認欲求を否定することで自分の人生が始まるというようなことも言っています。

終局は、人は「そこに存在しているだけで価値がある」という事にたどり着きます。
その人が何をやったかという行為ではなく、その人の存在そのものに価値があるのです。
そして人が生きるに際して満たすべきものは、貢献感だといいます。
それはすなわち生きる喜びであり、幸せそのものであると言います。

じつは本書は、悟りに関することを心理学的に説いたものであるような気がします。

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