はじめの一行
述懐
本書の始まりは、主婦から二代目社長として町工場を盛り立ててきた著者の述懐から始まります。
「社長」と呼ばれるようになって10年がたつ。父の急逝を受けて、一介の主婦から町工場の2代目に。それから、もう10年なのか、まだ10年なのか。
思わぬ受注増という追い風が吹いたり、100年に一度の経済危機と言われたリーマンショックがあったりした。なぜ、自分が社長の時に「100年に一度」が来なければならないのか。当時はついていないとも思ったが、今となればよい経験だ。
お客様が必要としてくれること、仕事があること、社員さんがいてくれることのありがたみを実感できた。そして、自分が意外にも強くなっていることもわかった。もう、「社長の仕事」とインターネットで検索した10年前の私ではない。
ダイヤ精機で働く私たちは、東京都大田区でものづくりに取り組めることを誇りに思っている。それは大田区が町工場の集積地だからだ。高度成長期、父を始め、物作りに携わる人々は、幼い私の目に輝いて見えた。輝く時代をもう一度この目で見たい。
本書の内容
一度は父にリストラされた次女
町工場を経営する父の次女として生まれた著者。
いろいろと経緯があり、父の会社を継ぐことになった。
実は、著者は幼少期に亡くした兄の「代わり」として男の子のように育てられた。
女性とはいえ、後継者候補として会社に入社したものの、うまく回っていない会社の改善計画を父に提出した。
しかし、それを見た瞬間、父は「明日から来なくていい」という。
その経営改善計画には、リストラを含んでいたからだ。
そんなこんなで、会社を辞めたりしたものの、ある日父が急逝。
それを機に、会社の二代目として代を継ぐことになる。
その時には「ぜひ来てほしい」と言っていた幹部さえも、著者の会社改革に異を唱え始め、社内で孤立。
この状況の中で、社員とのコミュニケーション、会社の変革、
そういったことを行ってきた著者の生きざまがここに記されています。
NHKドラマ「マチ工場のオンナ」
実は、2017年11月には本書をもとにした、ドラマがNHKで放送されたようです。
時節柄、女性の社会進出、苦しい状況からの起伏にとんだ成長物語は、物語として非常に興味深いものだと思います。
一方、気になる点もあります。
著者が、父の言いつけ通り(?)、兄の人生を歩もうとしている点。
いまもまだ、本人はモヤモヤしたものを抱えてるんじゃないか・・・なんて邪推をしてしまいます。
いずれにせよ、ある日突然父の会社を引き継ぎ、ここまで盛り立ててきたというのは並大抵の努力ではないと思います。
そんな中で頑張ってこられた著者には、拍手したい。
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