はじめの一行
警察の日常
本書は、主人公である代官山の日常(?)から始まります。
ま、日常と言っても、普通の人にとっては非日常ですが。
実はこのシーンの後、普通の刑事ドラマ的な話とは一線を画する驚くべきことが起こるのですが・・・笑
プロローグ
代官山修介は土埃を巻き上げながら階段を一段飛ばしに駆け上がっていた。そのすぐ後ろを飯島昭利と、彼とコンビを組んでいる荻原がついてくる。
「おらぁ、待てぇ、山田!」
代官山は怒号を上げながらジャージ姿の男の背後を負う。奥歯がズキリと痛む。代官山は痛みのある歯を食いしばりながら速度を上げた。
「うるせえ!ついてくんなっ!」
山田は後ろを向くことなく怒鳴り声を返した。小太りなくせに意外と速い。追いつきそうでなかなか追いつくことができない。しかしそれもあと少しで終わらせることができそうだ。山田はこの廃墟ビルの中に逃げ込んだ。この階段も長く続くわけじゃない。六階の建物だ。屋上まで出てしまえば逃げ場はない。代官山は気力を振り絞りながら必死になって駆け上がった。
絶対に逃がすものか!
本田組の組員が射殺される事件が起こったのは今から一週間前のことだ。本田組は浜松市周辺を取り仕切ってはいるが、典型的な田舎の弱小ヤクザである。射殺という事件の重大性から、その日のうちに管轄である浜松中部所に帳場(捜査本部)が立てられた。
本書の内容
ドS刑事シリーズ
本書は、以前にもご紹介したドS刑事シリーズの第二弾となります。
以前の記事はこちら。
このシリーズの最大の特徴は、登場人物の個性。
特に、黒木マヤという刑事は、とんでもない性癖を持っています。
そもそも、死体マニアで、死体を見たいがために刑事になったというプロフィール。
現場の遺留品を勝手に持って帰ってコレクションしていたり、同僚を危険にさらすことに何ら罪悪感を持たないちょっと怖いキャラ。
なのに、長身・スリムなモデル体型の美女ときている。
まあこの設定だけでも、けっこうおもしろい。
前作で、マヤは代官山を気に入り、今作では浜松署所属の代官山を、警視庁に出向させる。
マヤの父は警察組織のナンバーツー。
その力を縦横無尽に使って、やりたい放題。
なかなか痛快です。
クイズチャンピオンの周辺で起こる猟奇的殺人
今回の事件は、クイズ王の周辺で起こる数々の殺人。
すべての被害者は、のどをナイフで深く書ききられている。
被害者の共通点は、見えるようで見えない。
犯人はいったい誰なのか。
雲をつかむような状況から、一つ一つ糸を手繰り寄せることで真犯人にたどり着いていく。
そのストーリーも、背筋が寒くなるような話が満載です。
グイグイと引き付けられる展開は、一作目を上回るものがあるのではないかと思います。
今回は、新たな登場人物、おぼっちゃまでM男的な浜田などを交えて、笑っていいのかわからないドタバタ劇を繰り広げてくれます。
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