はじめの一行
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秋の陽射しは脆く、晴天があたりの緑を現職のまま浮かび上がらせようとも、光が目に沁みない。真夏の正午過ぎでも、家畜や奴隷のように炎天下を引きずり回された日々を思えば、さほど苦痛には感じなかった。
ただレインウェアにすっぽりと身を包んでいるせいで、かなり蒸し暑い。高度が上がればすぐに必要となるとわかっていても、今は不快だ。とはいえ、汗だくになるほどではない。
四人ともやせていて小柄だった。ゴアテックス製のセパレートは大きすぎて、体に合っていない。みな寒がりなのは、丹沢の塔ノ岳、大倉尾根コースを上った時痛感した。
水鏡推理シリーズの第四弾。
シリーズものであるにもかかわらず、おなじみのキャラクターをなかなか出さない。
これも一つの戦略なのでしょうね。
いつでるのか・・・なんてじらされながら読み進める。
本書の始まりは、なぜか山登りのシーンらしい。
「家畜や奴隷のように」引きずり回されたっていったいどういうこと?
はじめの一行で、疑問を呈すると、ついつい先が気になってしまいます。
この思わせぶりな感じが、やっぱり先を読んでもらう一つの秘訣なのかもしれませんね。
本書の内容
不正を見破る
このシリーズの基本的な骨格は、文科省「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」に所属する、水鏡がその不正をばっさばっさと暴いていくストーリー。
シリーズ1作目では、普通にそういった不正をストレートに暴いていました。
がだんだんと、話が進むにつれ、本来の水鏡の仕事と違うところにかかわっているうちに、本業分野の話になってくるという展開が増えてきました。
今回は、ある4人組の山登りという舞台。
この4人組がいわくつきの若い女子4人。
まあ、この辺は、あまり説明しすぎるとヤボなので、気になる方は本編をお読みいただいたほうがいいでしょう。
実は社会派の側面も・・・
このシリーズを通して、物語の面白さだけでなく、なんとなく著者の考え方が伝わってくる部分が随所にあります。
それは官僚のあり方の問題だったり、そこに対する世間の誤解だったり。
一方的に批判するわけでなく、こんな大変な部分もあるけど、こんな悪い奴もいる的な内情がこのシリーズを通じていろいろ出てきます。
実際、さまざまな取材をされているようですし、なかなか普通で走りえない情報も出てくる。
著者の松岡圭祐さんの作品に共通する部分ですが、とにかくリアリティがすごい。
それだけたくさんの取材をしているんだろうなぁ、と想像します。
物語の構成のみならず、その周囲を固めるリアリティがより物語を面白くしているのかもしれません。
たとえば、気象に関する話。
親子の心理的なつながりの話。
この辺りは、相当勉強しないと書けないレベルじゃないかな、なんて思います。
このシリーズはだんだんと水鏡が危険な目にさらされることが増えてきました。
たとえば、名探偵コナンくんが、子どもなのにあり得ない確率で事件に巻き込まれるのと似た感じです。
けど、ここはある程度のリアリティを持っているはなし・・・というか水鏡が余計なことに首を突っ込みがちなせいなのでしょう。
なかなか楽しいエンターテイメント作品です。
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